冒頭が「かえるぴょこぴょこ」 「かえるぴょこぴょこ」 長丁場の事件の間の、久しぶりの逢瀬。突然狡噛が発した言葉に、征陸は一瞬目を丸くした。 「コウ?」 「ああ、悪い。ふと思い出したんだ」 「早口言葉を、か?」 「いや、小さい頃は何も考えずにただ身に染みた娯楽を楽しんでいたなって」 「確かに」 今では娯楽や酒、ギャンブルなどはストレス値があがる要素があると取られ、大半が敬遠している。けれど、とっくの昔に潜在犯になった自分達には関係のないことだ。 「とっつぁん、勝負しようぜ」 「勝負?」 「ああ。どっちが早口言葉をうまく言えるか」 「別に構わないが…ただ勝負ってのもつまらねぇな」 征陸の言葉に、狡噛は暫し考え込み、 「負けたほうが言うことを聞くってのは?」 にやりと笑む狡噛に、征陸も倣った。 「同感だ」 そして、大の大人が二人。 「かえるぴょこぴょこ」と早口言葉を言い出した扉の向こうでは、朱が気まずそうに佇んでいたことを二人はもちろん知らない。 2013.2.8 |