裏切り設定


目の前の光景に、狡噛は言葉をなくした。
槙島を追いつめ巨大なアジトを突き止め姿を現した人物。それは――

「よぉ、久しぶり」
「さ、さや…ま?」

そこには、数年前に死んだはずの左々山光瑠がいた。まさか、という驚愕は彼がゆっくりと近づいてくることで現実味を帯びてくる。

「な、だ、って」

あの時、確かに死んだはずなのに。
すると、左々山は嬉しそうに笑った。

「相変わらずその素直は性格は変わってないんだ?」
「…どういう意味だ」

狡噛が距離を保ちつつ尋ねると、左々山は歩を止めた。

「俺はずっとシビュラシステムを憎んでいた。だから、手を貸した。それだけのことだってことだよ」
「…だましていたのか」

死んだのも嘘だった。
どんな理由があるにせよ、それが許せない狡噛はきつく睨む。

「人聞き悪いなー、監視官…と、今は執行官だっけ?全部教えてやるよ。ほら」

左々山が手を差し出す。なにを考えているか分からず狡噛が躊躇していると急に後ろから押される衝撃があり、左々山の腕に抱き止められた。

「おっと」
「!?」

振り返ると、そこにはずっと追っていた槙島。

「な…」

離れるより早く、項にきつい衝撃を受けて、そのまま意識を失う。

「監視官。ゆっくり教えてやるよ、ゆっくりな」

聞いたことのないような冷たく、そして獰猛な声が耳に残り、狡噛はその場に倒れ込んだのだった。
これから自分の身に起こることなど想像もつかないまま。

2013.2.18




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