one time 「んー」 二人で抱き合って眠っていると、佐々山が擦り寄ってきた。起きている訳ではない。それでも狡噛に腕を絡ませ、引き寄せながら甘えてくる仕草。こんなことは初めてではない。かといってそんなによくあることでもない。なぜかと考え、すぐにその答えは導かれた。 (そうか) 今日の被害者は小さな子供だった。しかも犯人が潜在犯の父親。 暗い過去を持つ自分と、重なる部分があったのだろう。普段は軽くどんなことでも明るく受け止める背景には執行官ゆえの罪やトラウマに苛まれていることは佐々山も例外ではない。 だが、あからさまに弱さを見せるような男ではない。むしろ明るさのフィルターで闇を隠す強さを常に抱いている。 許容範囲を超えると、犯罪係数を抑えるためにこうして甘えてくる。 「佐々山…」 狡噛はその身体を抱きしめて、ぬくもりを与えるだけ。ただ、それだけだ。 何も求められないなら応える必要はないし、佐々山自身が望んでいないだろう。 (それなら、俺にできることは…) こうして彼を甘やかしてやるだけ。 佐々山の心を少しでも解かし、和ませることが出来るのなら、それ以上のことは何も望まない。 「ゆっくり、休めよ」 その言葉に返事をするように、ぐっすり寝ていた佐々山がほんの少し笑ったような気がした。 |