可愛いあの子たちは今日も(chin様より/2215/animal)


雲雀恭弥の一日は愛らしい二匹の世話から始まる。群れるのは嫌いと言いつつも偶然に出会ってしまったヒバードとロール。出会った時から変わらず、二匹は恭弥のお気に入りだった。
そして二匹は恭弥にとってペットではなく、家族だった。朝おはようと声を掛ければ、ヒバードはおはようと返してくる。ヒバードは言葉の覚えられる優秀な鳥なのだ。ロールは言葉には出来ないものの、可愛らしい鳴き声と行動で感情を示してくれる。
そんな二匹を連れて学校に行くのも、今では恭弥の日課となった。

***

「ほら、ご飯だよ」

昼休みも恭弥は二匹と一緒にご飯を食べる。それはディーノがいる時も変わらず、その世話は今ではディーノも一緒にすることになっている。今日はディーノがロールを、恭弥がヒバードの担当だ。

「うわっ、ちょ、刺すなよ!」

普段は静かな食事時、応接室にディーノの悲痛な声が響く。それは恭弥の向かいのソファーに座るディーノの声だった。何をしているのかと思えば、ロールは背の針を思いっきり立ち上がらせている。どうやらディーノはロールを怒らせたらしい。

「あなたなにしたの?」
「いや何って、こういつもの様にだな」
「ロールは理由もなく怒ったりしないよ」

恭弥の言う通り、ロールは理由なく怒ることはない。ただ、性格が穏やかなヒバードに比べたら気が短いだけで、それでも突然怒ることなんて今までなかった。だからきっとディーノがなにかしたのだろう。
それは悪戯程度のものだったのかもしれないが、ロールを相当怒らせる結果となってしまったらしい。現にヒバードはロールを慰める様に周囲を迂回したが、ロールにはディーノという一点の敵しか見えていない。

「いってぇ!」
「ロール、こっちおいで」

ディーノは伸ばした掌を刺された様子だったが、恭弥はそれよりもロールのことが気になって仕方がない。ディーノの手元にあったちくわでロールを引き寄せれば、勢いよくそれに噛り付いた。
食べ始めればその怒りは少しずつ治まっていき、数分もすれば幸せそうなオーラに包まれ「美味しい?」と恭弥が聞けば、嬉しそうに鳴き声を上げた。

「うう…俺のことは無視かよ」
「あなたやっぱりなにかしたでしょ。焦らしたりしなかった?」
「じっ…! 知らねぇな」
「どこ見て言ってるの」

手を摩りながら、ディーノは恭弥から視線を反らした。恭弥の予想は大体当たっていた。

ことの真相はこうだ。
あまりにもロールの食い付きがいいのをディーノが面白いと思い、ロールの前でちくわをちらつかせては遠ざけ、ちくわが近付けば食べようと反応するロールで遊んでいたのだ。はじめは僅かな距離でロールも食事にありつけることができた。
しかしディーノはそれでは面白くない。食べてる最中にちくわを引っ張り、ロールを軽く引きずってみたり、食べる直前に引いて飛びつくロールを空振りさせたりしていたのだ。
はじめの数回はロールも状況を飲み込めず、もう一度と飛びついて来た。しかし二回三回と繰り返し失敗が続けば、異変に気が付く。ディーノがやっていると気が付くと、怒りを露わにディーノに飛びついたのだ。

しかしそれもこれも全てはロールが反応含め、可愛くて仕方なかったからである。二人でいる時に恭弥がヒバードやロールばかりなってしまうのも仕方ない。それほどまでに二匹は愛らしかった。

「きょーやごめん! ついロールが可愛くてさぁ・・・」
「可愛くても、可哀想なことしないで」

ディーノのいない時も二匹は恭弥の側にいて、恭弥は二匹の世話をする。それはディーノがいても変わらない日課だった。ディーノがいなくても寂しさを感じないのは、二匹のおかげでもあるのだ。



Luminousのchin様より、フリリクで頂きました!
すごく可愛くてかわいくてただ、可愛いだけではなく言葉のそれぞれがとても素敵なんです><
特に好きだとか大事だとかではなく、お気に入りという表現が雲雀さんらしいと思いました。
ディーノさんと分担してご飯をあげるなんて「か、可愛いっ」と思いきや、刺されそうになるディーノさんに笑ったり、ロールの事を良く分かっている雲雀さんにじーんときたり、ロールをからかうディーノさんに愛情を感じたりして本当に微笑ましかったです。
個人的にはディーノさんにイタズラされているロールが段々機嫌を悪くする所が可愛くて仕方なかったですvv
ラストの、「可愛くても、可哀想なことしないで」という台詞が雲雀さんらしくて大好きです。
屑星さまの書かれるお話はキャラそれぞれが本当にそこにいて、その時間を生きている感じがじかに伝わってきてお話を読んでいるだけで楽しくなります。
見ているだけで微笑ましい可愛いお話をありがとうございました!



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