プレゼント(おやま様より/2215) 「やっぱりこうなんの?」 「何でも良いって言ったのはあなたでしょ」 目を爛々と輝かせて喜ぶ恭弥はマジで襲いたくなるくらい可愛いんだけど、並中の屋上で殺気を纏いトンファーを構えた姿にそうも言ってられない。 「思う存分、咬み殺せるのはいいね」 「そー簡単にはいかないぜ?」 「望むところだよ」 恭弥はリングに紫の死ぬ気の炎をともらせ、匣へ注入する。 …おいおい、なんかいつもより炎が多くないか?どんだけ張り切ってるんだよ。 いつもより元気百倍な恭弥の匣アニマル、バリネズミのロールが匣から勢いよく飛び出し恭弥の肩にピョコンと着地した。 「マジでやらねぇとヤバそうだな…」 あんまり恭弥が嬉しそうだから付き合ってやるんだぞ。 恋人の可愛いわがままに死にかけるのもどうかと思うけれど、恭弥が望むならいくらでも叶えてやりたい。 できるなら二人きりで食事したりデートに出掛けたり、恋人としてイチャイチャする方向を俺としては期待してたんだけど、なんせ恭弥だからな。 まぁ、そんなことにはならねぇか。 力強く地面を踏みつけて跳躍してきた恭弥をムチで牽制する。 恭弥はすかさず後退りして、こちらを睨み付けてきた。 「さっさと匣をだせば?」 「いきなりは可哀想だと思ってさ。ハンデだよ、ハンデ」 「……貴方、僕をなめてるの?」 「能ある鷹は爪を隠すってな」 「ふぅん。だったらすぐに使わせてあげるよ」 恭弥の右手の人差し指に手錠が1本。それを遊ばせるようにクルクル回すと、手錠は1本、また1本とまるで手品のように数が増えていく。 「僕を甘く見ないことだね」 漆黒の髪が風に揺れ、好戦的な笑みが浮かぶ。恭弥の瞳の奥が輝いていて、こんな時なのに「すげー綺麗だな」って純粋に目を奪われた。 だからこそ、手に入れたい。 凶暴で美しい獣を。 「まさか。恭弥の強さは誰よりも知ってる」 「試したいことがあったから実験体には丁度いいね。ロール、球針体だ」 キュキューー! 動物の鳴き声が、並中の上に広がる空にこだました。 「ボス、無理すんなよ」 「いつつ…。いや、大丈夫だ。ロマーリオ、悪いが人払い頼めるか?恭弥が起きたら暴れまくるだろうし」 「おぅ。それより校舎の修繕費がバカになんねーぞ」 「それは…悪い」 「ボスにはこれからしっかり稼いでもらうから構わないぜ」 笑って混ぜっ返すロマーリオに何も言えず、俺はひきつった笑いしか浮かばない。 恭弥の誕生日だから仕方ねぇなボス、と理解ある部下の心遣いに礼を述べて、俺は気を失った恭弥を抱きかかえキャッバローネのアジトの一角にある自室に連れてきた。 恭弥が好き放題暴れたおかげで学校の校舎が半壊した。今はキャッバローネにいる霧属性の奴等に指示して、建物を幻影で元通りの状態に見せている。 一応、ツナとリボーンには事情を説明してあるからなんとかなるだろ。 闘いの中で感じた…恭弥はまた、強くなってる。全く手加減ができなかった。 自分の手のひらをじっと見つめれば、いくら望まれたこととはいえ、この手が恭弥を傷つけたのかと思うと腹立たしい。 今回ばかりは恭弥の隙をついて気絶させるのが精一杯だった。 あーあ、家庭教師が生徒に負けてたんじゃ示しがつかねぇよな。 だから今より強くならなきゃ。恭弥にいつまでも追い掛けてもらえるように。 枕に頭を沈めてベッドで眠る恭弥の横に腰掛けた。 傷だらけの顔と身体中に巻かれた包帯が痛々しい。 …なにが嬉しくて、恋人の誕生日に怪我をさせなきゃいけないんだろうな。 起こさないようにそっと指で頬をなぞると、パシンと乾いた音が部屋に響いた。 「…触らないで」 「よォ。目ぇ醒めたか、恭弥」 振り払われた手が存外にいたくて、宙で手首をヒラヒラさせてる。 俺とは反対側にプイと身体ごと向けてしまった恭弥は、動かした衝撃に小さく呻いた。 「大丈夫かよ、無理すんなって」 「…無理なんてしてないよ。このくらい、痛くもない」 おーおー、怒ってる、怒ってる。 俺に負けた悔しさで不機嫌全開の恭弥には、何を言っても無駄だ。ヘタに声をかけても却って機嫌を悪化させるだけだってのは、今までの付き合いで身に染みて理解してるから。 「そうか。なら心配いらねえよな。じゃあ、今度は俺発信のプレゼント」 「いらない。欲しくない」 「まぁそう言うなって。恭弥に受け取って欲しいんだ」 そう言って取り出したのは、シンプルなシルバーリング。 毛布に潜っていた恭弥の左手を取って指にはめた。 「なにこれ。新しいリングにしては随分デザインがないんだね」 「バカ、なんでも死ぬ気のリングに結びつけるなよ。これは俺とお揃いのペアリングだよ」 恋人なんだから、これくらいはいいだろ? 指輪をはめた薬指に掠めるくらいのキスを贈る。 「俺と出会うために生まれてきてくれてありがとう恭弥。愛してる」 俺に背を向けたまま左腕を上げて、興味なさげに「ふぅん」と呟く恭弥がどんな表情をしていたかは分からない。 「貴方がくれるなら安物じゃないだろうし、取り敢えず貰っておくよ。いくらかで売れるでしょ」 「おいおい、いきなり売ろうとするなよな」 可愛くないことをいう恭弥の耳が真っ赤になってたのには気づいていたけれど、その強がりがあんまり可愛いから黙っておいた。 まだ熱の冷めない耳元に、唇を寄せる。 「誕生日おめでとう、恭弥」 「――寝る」 思い切り抱き締めたい衝動をグッと堪えて、じゃあ目が覚めたらケーキを食べようと約束して部屋を出た。 きっと今までで一番甘く、蕩けるようなケーキになる。 * さら☆まだのおやまさまより頂きました! 何気なく誕生日に何かくださいとおねだりしたらその数時間後にはメールをくださったという、神様のようなゴッドハンドです…! もう何回も夢かと思いましたが、夢ではなかったです(´▽`) バンバンバン(〃▽〃) 個人的に優しい優しいディーノさんが好きなので、甘やかしたり本当に欲しいものをくれたり、ツボ満開でした! 雲雀たんが可愛くてきゅんきゅんしちゃいましたよう!ディーノさんの2つのプレゼントにもきゅんきゅん! 愛ですねっ! しかも、大好きなロマとかも出てきてさらに…! お忙しいのに、本当に素敵で可愛くって優しさ溢れるお話をありがとうございました…! そして雲雀さん、はぴば!です(´▽`) 2012.05.05 |