おかわり 「オカワリ、オカワリ!」 ご飯が終わった後、最近繰り返される光景に雲雀は眉根を寄せた。 イタリアのキャバッローネ邸に遊びに来て1週間。ここ数日多忙なディーノが相手を出来ないからと雲雀が見つけた遊びは、ディーノの匣兵器であるスクーデリアと一緒の遠出。 少し足を伸ばせば木々や川が姿を見せる一帯は、雲雀はもちろん小動物のロールやヒバードもお気に入りの場所。 せっかくだからとキャバッローネ専属シェフが料理を持たせてくれたのは良いが、とても雲雀と小動物で食べ切れる量ではなく、食べ過ぎないように、とヒバードやロールの分は雲雀が小さなお皿に小分けしてやっていた。 ――が、ヒバードは足りないらしく、最近覚えた「オカワリ」を連呼している。 「もうダメだよ。君、ここに来てから太っただろ。それ以上重くなると飛べなくなるよ」 「ヒバード、タベル、タベル!」 だが、いくら言ってもヒバードは聞こうとしない。雲雀も強く跳ね除けることも出来ず、デザートくらいなら良いか…と「最後だからね」と箸を手に取った瞬間だった。 今まで大人しくしていたスクーデリアが立ち上がるとヒバードの前に来るとじっと凝視する。 それはまるで、小さな子供を叱っている母親のような凛とした眼差し。 「…ピイ」 その威圧感に圧倒されたのか、ヒバードはパタパタと飛び上がると、スクーデリアの背中に降り立った。 「サンポ、サンポ」 「ヒヒーン」 そうしてスクーデリアとヒバードがゆっくりと場を離れると、今度はロールががじがじと弁当箱を噛んでいることに気付いた。 「ちょ、ダメだよ。これは!」 「クピイ」 「クァッ」 ロールに目をやれば、暫くしてエンツィオが坂を転がっていく。その先はもちろん水がたくさんある小川。 雲雀は慌ててエンツィオを確保すると、 「君達。いい加減にしないと…許さないよ」 「キュっ♪」 「クァ!」 雲雀の言っている事が分かっているのか分かっていないのか、二匹が楽しそうにじゃれつくのを見ながら小さなため息をつくのだった。 そんな穏やかな午後の風景。 雲雀がこの時間を思ったより楽しんでいることは、誰も知らない。 2012.4.6 |