優しいてのひら それは、ロールがまだ生まれたばかりの頃。 「お!これが匣兵器か?」 「そう。可愛いでしょ、ロールって名前だよ」 満足げにいう雲雀の背後では草壁が一生懸命離乳食を作っている。 「キュ」 小さな手足は雲雀の和服を掴んで離さない。 ディーノが可愛いな、と頭を撫でようとした時だった。今まで大人しかったはりねずみがひどく慌てた様子で暴れだす。 「キュウウウッ!!!!」 「な、なんだ?」 「ロール、落ち着いて」 雲雀が宥めてもディーノが寄るたびにロールは暴れだす。明らかに怖がっているようにしか見えない。 「怖がるなよ、ほら」 「キュキュキュー」 それはまるでやだやだ、と言っている幼子のようだった。 雲雀から避難したロールは、草壁の陰に隠れる。 「ロール。ほら、おいで。ディーノさん、すみませんが離れてて下さい。怖がっています」 草壁に言われ、ディーノは仕方ないとロールから離れる。 雲雀は主だし、草壁は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるから、人見知りをしているとほとんどのものが思うだろう。だが、ディーノは違った。ロールの眼差しはただ怯えているわけではなくて。 「キュウウー」 ディーノが手のひらを広げてロールに少しずつ近寄ると、今度は逃げなかった。ふわりと暖かいおでこを撫でてやると気持ち良さそうに目を瞑る。 「あ、大人しいですね」 「ああ。さっきは隠すのを忘れてたからな。優しい手のひらだと思い込ませれば大丈夫だ」 「ディーノさん?」 草壁はわけが分からないように首を傾げる。だが、一部始終を後ろで見ていた雲雀には何もかも分かっているようだった。 自分の中の黒と白。雲雀や草壁の前では隠すことがなかったから、ロールはそれに怯えたのだろう。 優しいのか怖いのか、綺麗なのか汚いのかわからないディーノの本性。 「ロールも賢いでしょう」 「ああ。さすが恭弥の匣兵器だ」 きっと何も考えずに感覚で悟ったのだろうが、誉められていると分かったらしい。ロールは嬉しそうに、今まで泣き叫んでいた姿はどこへやら。 「クピイ♪」と二人を交互に見やりながら、喜んだ。 2012.4.3 補足ですが、たぶん動物は手のひらを広げて近づくと恐がるとか聞いた気がします…グーの方が良いのかな?違ったらごめんなさい(;_;) お題が手のひらなのでそのままにしました; |