1 「幸せにくらしました。まる。」 ぱたん、と雲雀が絵本を閉じると、ロールと小次郎が目をきらきらさせて、最後のページを前足と嘴でつつく。 「なに?このページがどうしたの」 そこには燦然と輝く豪華な料理と飲み物の挿絵が載っていた。絵本の最後を締めくくるパーティーの様子だ。 「パーティーをしたいの?」 「タンジョービ!」 言葉を代弁するようにヒバードが囀る。 「誕生日?」 誰の、と思考を巡らし「あ」と気付く。自分の誕生日とさほど変わらない4月24日。山本武の誕生日だ。 ボンゴレではファミリーのBDを盛大に執り行うのが決まりになっていて、山本も例外ではなく祝ってもらっているのは知っている。雲雀は参加したことはないが、ヒバードいわくとても豪勢だという。 何度か紛れ込んだことのある小次郎やロールも知っている事だ。 「今年もボンゴレが盛大にパーティをするよ。君たちはそれに出たら良い」 すると、一匹と一羽は揃って頭を振った。 「ヒバリトイッショ、オイワイ」 「…しないよ、僕は」 すると、今まで大人しくしていた次郎までもが「わふ!」とねだってきた。 「したって、山本も来ないよ」 皆の顔を見渡しながら言うと、また頭を振られた。 どうあっても雲雀が頷くまで退かないらしい。 「山本が来る補償はないからね」 折れた雲雀に、小動物たちは嬉しそうに鳴いたのだった。 * 「飾りつけはロール」 「キュ!」 「料理は僕とヒバード」 「リョーリ!」 「プレゼントは次郎と小次郎」 「ピー!」 「わふ!」 雲雀がそれぞれに指示を飛ばすと、小動物たちは散らばり山本の誕生日パーティーを決行すべく、準備に取り掛かり始めた。 やると決めたからには徹底してやるのが雲雀である。料理の本を手にキッチンを占領すると、『お寿司』のページを開く。山本の好みなど知らないが、実家は寿司屋だったのだからきっと大好物のはずだ。大体の手順は跳ね馬に電話をして、事細かに聞いたから抜かりはない。 「オスシ、オスシ!」 「ヒバード、洗剤を持ってきて。お米を洗うよ」 「センザイ♪」 「跳ね馬が高級な洗剤ほど美味しく炊けるって言ってたよ」 それがどんな惨状を招くか知らずに、雲雀とヒバードは大量の高級洗剤でお米を洗い始めた。 → |