あ・もーれ(2013雲雀誕/DH)


「シーッ」

すっかり夜も深くなった日が変わる頃。ディーノが足音を立てずに部屋に足を踏み入れると、ナイトと化したはりねずみが寄ってくる。そして次に黄色い小鳥。だが、追い返すような真似はしてこない。
中央のソファで眠る少年は葉が落ちる音でも目を覚ますというが、ディーノが近寄ってもその気配は一向に訪れない。それだけ信頼を寄せてくれているかと思うと、自然に笑みが漏れた。
あと数分で、5月5日。雲雀の誕生日だ。
夜景が見えるレストランで極上のフルコースを食べて、プレゼントを渡す。毎年考えているプランは今年もディーノの多忙極まりないスケジュールでお釈迦となった。予定を切り詰めてこうして夜中にしか来れないディーノを雲雀は一度も責めたことがない。関心がないわけではない。数年前ならディーノも不満に思っただろう。自分ばかり想いが強くて、雲雀の気持ちを疑いすれ違っていたかもしれない。
 ただ今は、彼の感情が手に取るように分る。口ではつれない言葉を吐いていても目元が柔らかく緩む。ディーノが顔を出すと、雄弁になる。言葉が少ない分、雲雀の感情表現は身体全体から漏れている。そのことに気付けば、これ以上ないくらいに愛しく思えた。

「恭弥」

すやすや寝入っている雲雀のおでこに軽くキスをすれば、丁度腕時計が12時を知らせる音を奏でた。

「ん…」
「悪い、起こしたか」
「跳ね…馬?」
「Buon compleanno、恭弥」

目をこすりながら起き上がる雲雀にキスの雨を降らしながら言うと、雲雀はほんの少し頬を赤らめた。

「毎年毎年飽きないね」
「飽きるわけないだろ。もっと寝てて良いんだぞ」
「起きる」

雲雀はもそもそと起き出して来ると、両手を差し出した。

「え?」

首を小傾げて両の手のひらを向けてくる姿は、おねだりのポーズだ。
出会った頃からディーノに手を差し出すときに雲雀が欲するものといえば。

「悪い、今日はエンツィオはもう寝ちまっていねーんだ」
「誰がエンツィオが欲しいって言ったの」
「え?だって」

それなら、雲雀が欲しいものは。

「お、俺?」
「他に誰がいるの」

真っ直ぐに見上げてくる双眸に戸惑いながら、ディーノが手を取るとぐい、首ごと引き寄せられた。密着する肌を通して伝わってくる熱がとても、熱い。

「恭弥、俺の事はついでだって」

エンツィオとスクーデリアに会いたいから、毎年誕生日には連れてきてよ。
そんな文句を聞かされていた。それを信じながらもディーノ自身が何よりも雲雀に会いたいから、無理をしてまで足を運んでいた。

「だから、へなちょこだって言われるんだよ?」

不敵に笑う雲雀に、ディーノはようやく笑みを浮かべた。

「それは悪かったな」

ぎゅうううと抱きしめると、いつも乱暴に振り回される両の手は優しく背中に回った。

「くれるんでしょ」
「え?」
「昨年、言ってた。ディーノ・キャバッローネの人生まるごと。僕に」
「ああ。恭弥が欲しいなら、1年ごとの俺の人生をくれてやる」
「報酬は?」

ほんの少し身体を離し、至近距離で雲雀が問うと、ディーノはふわりと笑んだ。

「ありったけの愛情で」

どちらからともなくキスを交わすと、そのままベッドに倒れこむ。反動で羽毛が舞い飛び、ヒバードとロールが起きてしまったが、何度も何度も二人でキスを交わした。
こうして触れ合うだけで愛しさが増す。
愛情を通わすだけで震えるような恋情がある。
ヒバードでもロールでもエンツィオでもスクーデリアでもない。

(ディーノ、だけ)

自分をこんなにも満たしてくれるのは。


初めて抱く感情に、雲雀はぎゅ、とディーノを抱きしめた。


2013.05.05

Buon Compleanno!

無配から雲雀誕でした。
少しずつ成長していったら嬉しいです!





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