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「これは、御節。これはお雑煮」
「コレハ」
「それは、お屠蘇。君達も入れてあげるよ」
「待て待て待て!」

1月1日。その年の豊穣を司る歳神様をお迎えする行事であり、一般的に正月と呼ばれる日本では1年で一番大事

な日。
普段は滅多に祝い事に浮かれない雲雀邸でもこの日ばかりは特別で、草壁が朝からてんてこ舞いになっていた。そ

んな中、忙しい合間を縫ってこの日ばかりはと卓を共にしていたディーノが目を見張るのも仕方のないことで。

「なに」
「さすがにヒバードやロールに酒はまずいだろ。よっちまうぞ」
「これくらいで酔わないよ。ね」

雲雀に同意を求められれば彼らが拒むはずもなく、「ノミタイ」とヒバードが訴えロールも「クピ」と愛らしく合

いの手を打つ。

「そういう問題じゃねーっての。クリスマスだってべろんべろんだったじゃねーか」
「イタリア人のくせに細かいね」
「お前が大雑把なんだ!せっかくホテルを予約してたのにこいつらの介抱でスイートルームが動物病院になったん

だぞ」

あの時はヒバードやロールだけでなく、エンツィオやスクーデリアまでシャンパンを飲み干し、大変だったのだ。
そんなディーノの訴えに、雲雀は肩で大きく息を吐いた。

「お屠蘇の意味知ってる?」
「は?正月に飲む酒だろ?」
「ディーノさん、正月に振舞われるものは全部意味を伴うんですよ」

背後で草壁が口を挟む。

「そうなのか?」
「そう。一年間の邪気を払い長寿を願って飲む祝い酒だよ。御馳走の食べすぎや風邪予防に役立つ働きという意味

もあるから、子供だって舐めるくらいはするはずだよ。だから」

雲雀は視線を下に落とした。そして足元にじゃれつくロールを抱え上げ、ヒバードは2人の上空を飛び回る。

「みんなで飲まないと意味がない。わかった?」
「…ああ。悪かった。そんな意味があるなんて知らなかった」
「分かったら席について。うるさくされるのは嫌いだ」

雲雀の言葉に皆が席につくと、凛とした声が場に響く。

「あけましておめでとう」
「ああ、Buon anno!」
「オメデトーオメデトー!」
「クピ!」

そんな1月1日。
案の定飲みすぎて酔っ払ってしまったヒバードとロールのために、雲雀が1日中介抱することになったのは、それ

から少し後の話。

*Buon anno !*



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