episode01


草壁哲矢。
今から思えば、彼との出会いは、唐突だった。
偶然にして、必然。そして運命。
どの言葉もしっくり当てはまり、そしてどれも違う。出会うべくして出会った特別な存在。
そんな複雑で深い絆が、自分の人生にこれほど関わってくるなど、その時は思いもしなかった。





並盛町の都心部を少し離れた、小高い丘の上に聳え立つ一際大きい日本家屋。
多大なる財力と権力を兼ね備え、許されたものしかその敷居を跨ぐことを許されない。それが、この町に君臨する雲雀家だった。
名高い政治家や権力者でさえその地位を揺るがすものはおらず、並盛町で知らぬものは誰もいないほど恐れられ、闇の権力者としてその名を蔓延らせていた。
そしてそんな雲雀家に代々仕える一族が、同じく並盛町に居を構える草壁家だった。
それは何代も続き、草壁家の唯一の子息である草壁哲矢も例外ではなく、5歳になった頃世話係としてつくようになった。その一方、雲雀家の跡取りである雲雀恭弥は生まれながら一人を好み、物覚えがついた頃にはある程度のことはできるようになり、離れで暮らすようになった。だから、当然草壁の存在を聞かされても、邪魔以外のなにものでもなかった。

「生涯、命にかえてまでお仕えいたします」
「君、強いの?」
「一通りの武道は心得てますが、あなたほどではありません」
「ふうん。つまんないの。なら、いらないよ」

彼は生まれた頃から父のように雲雀家に仕えることだけを生きがいとし、この日を心待ちにしてたという。
だが、雲雀にはどうでもよかったし、むしろ目障りだった。邪魔になるようなら容赦なく咬み殺し、徹底的に排除した。それは痛めつける――というより、甚振るといったほうが正しいほどの、一方的な暴力。
それに反し草壁は、1ヶ月入院するほどの怪我を負った時も、高熱を出し寝込んだ時も、しばらくすれば雲雀の目に入らないところで見守るように佇んでいた。

「君、ばかなの」
「いいえ」

次第に無駄な力を奮うのが面倒になったのか、雲雀は草壁を殴らなくなった。もちろん、機嫌の悪いときや苛立っているときはそれに限ったことではないが、視界に入らなければそれでいい。

絶対に関わるな。
それが無言で交わした、暗黙のルール。
草壁も同意し、そのまま何も変わることなく、長い歳月が過ぎていった。

それから、10年。
雲雀が15歳、草壁が14歳のときである。


2012.11.02




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