1 いち、にい、さん。 カレンダーに大きくまるをつけられた印にはりねずみのロールは「キュ?」と首を傾げた。 基本的に雲雀は全てのスケジュールを頭に叩き込んだ上で、雑務を賄う草壁に一任している。それゆえ、掲げられているカレンダーはいつも新品同様真っ白なまま書き加えられることはない。 それなのに、赤くまるがつけられている日がたった1日だけ。 「キュ?」 「ロール、ロール」 不思議そうにしていると、ヒバードがぱたぱた飛んできた。 「キュ(これ、なあに?)」 「ピ…。ジュウヨッカ、キネン、キネン!」 「クピ?(きねん?)」 ヒバードは羽をぱたぱたさせながら、頷く。 「ヒバリ、ウマ、デアッタ!」 「キュウウ!(雲雀さんとディノの?)」 「ハジメテ、アッタ」 それを聞いて、ロールの顔はぱああ、と明るくなった。 大好きな雲雀さんと、いつも美味しいちくわやお菓子をくれる跳ね馬ことディーノの、出会いの日。きっとしるしをつけたのは、ディーノだろう。意外にイベントを大事にし、逆に疎い雲雀に何度も虐げられているのを見たことがある。 でもロールは知っていた。本当は雲雀も気にしていること。記念日を大事にしていること。 だから、カレンダーもそのままにしているに違いない。 (ようし…!) 「キュ!(僕も、お祝いする)」 「ナニスルノ?」 「クピ…(何しよう…)」 ロールは悩んだ。 雲雀とディーノは、何をしてもらったら喜んでくれるだろう。 「ショータイジョー!」 「クピ?」 「ココニ、アル」 小鳥はそれだけ言うと、室内を飛び回り何かを見つけたように嘴で咥えてくる。 それは、1通の招待状。先日雲雀の元へ来た綱吉の誕生日パーティーの招待状だ。 雲雀が群れるのを嫌うのは知っている。けれど、特別な日だもの。みんなでお祝いしたほうが楽しいに決まっている。 「キュ!(ロールも出す!)」 「ピ!」 「クピ(みんなでお祝いする!)」 「テツダウ!」 ロールの提案にヒバードも喜び、1匹と1羽は早速招待状作りに取り掛かった。 ある晴れた、主のいない応接室の中での出来事だった。 2012.10.14 |