一番のプレゼント(エンツィオ誕2012/3225)


今日は、いつも一緒に遊んでくれるエンツィオの誕生日。
だから、みんなでお祝いの準備。
ヒバリもめずらしく休みだと言っていたから、朝からエンツィオを連れて甘い香りのするお店に行った。
残ったロールと僕は黒い服のひとが夜なべして作った色々なものを飾りつけすることにした。
ロールは大きな布や飾りに絡まって転んで泣いてしまったけど、帰ってきたヒバリに宥められて再び元気良く手伝いをしている。
その間に僕たちで料理を並べて、ヒバリとエンツィオが選んだケーキはテーブルの真ん中。今まで見たことのないような大きな大きなそれは、エンツィオの好きなチョコレートケーキですごく美味しそう。
ロールには苦いからと、甘い生クリームも添えられている。
お皿も出したし、準備万端。
後はエンツィオの主人のディーノを待つだけ。いつもは遅いディーノだけど、今日は早く帰るからと言っていたから、もう帰ってくるだろう。

「ケーキ、ケーキ!」
「クァ♪」
「きゅ!」

待ち遠しいように帰りを待つ僕たちに、ヒバリも「もうちょっとね」といつも以上に優しい声をかけてくれた。
けれどその時、ヒバリの元へ電話が一本がかかった。きっとディーノからだ。
わくわくして待っていると――次第にヒバリの顔色が悪くなっていった。
ロールとエンツィオも不安そうに顔を見合わせている。

「――わかった。じゃあね」

電話を終えたヒバリに、エンツィオが慌てて駆け寄る。ヒバリは困った顔をしてエンツィオを抱き上げると、

「食べようか」
「クァ?」
「跳ね馬、遅いんだって。冷めちゃうから先に食べよう」
「クァ…」

キャバッローネ家ご自慢の料理長がエンツィオのために作った料理は、どれもこれも美味しそうでこの日だけの特別メニューばかり。添えられている飲み物やスイーツもそうだ。そのほとんどがエンツィオの好物でディーノが細やかに指示をしていた。みんなで一緒に食べようなと言ってたのは、つい昨日のこと。
だからせめて料理だけでも、とディーノは侘びもかねて忙しい合間を縫って連絡をしてきたのだろう。
だけど、エンツィオは少し考えた後、小さく首を振った。

「どうしたの?食べないの?」
「クァ」

ヒバリの言葉に、小さく頷く。

「冷めちゃうよ」
「クアァ」

それでもエンツィオはたしたし、と扉のほうへ駆け出し、振り返ってもうひと鳴き。

「クァ!」
「…そう。じゃあ、待とうか」
「クァ♪」

エンツィオの気持ちを汲んで、ヒバリも頷いた。そしてロールもご飯は諦めて、エンツィオとじゃれつくことにしたらしい。

「クピ!」
「クァっ」

ロールと僕で頑張った、飾りつけ。好物の料理や飲み物。それはどれもこれも特別なものだけれど、大好きなディーノがいなくちゃ、意味がない。
エンツィオが大好きな、跳ね馬。小さいころから一緒に遊んできた、友達。
エンツィオにとっては、それが何よりのプレゼント。

そして日が変わる直前に汗をかきながら帰ってきたディーノを、ヒバリが思いっきり咬み殺したことは言うまでもない。

Buon Compleanno!

2012.08.30



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