だっこ 「キュ」 ロールが昼寝から起きると、決まって雲雀にだっこをせがむ。まだ小さいから仕方ないとは思うが、最初のうちは常にべったりでどうなるかと思った。 だが、しばらく経つとその間隔は短くなってゆき、最近では数分だっこをしてあやしてやれば満足するのか、離してもぐずらなくなった。 「ロール、ロール」 いつもは散歩に出ているはずのヒバードが、雲雀の肩に降り立つ。気持ち良さそうに抱かれているロールを覗き込んで声をかけると、ロールも嬉しそうにキュッ、と返事を返した。 「見てると、可愛いもんだな」 ヒバードと同じように覗き込みながら笑みを零したのは、たまたま来ていたディーノだ。 背後から雲雀をぎゅ、と抱きしめながら言ったそれに、腕の中の黒い眼差しに強く睨む。 「ちょっと、鬱陶しいんだけど」 「いーだろ?俺もぎゅってしてーもん」 「あなたは子供じゃないだろ」 「男はいつだって子供だって。な、ヒバード?」 「コドモ、コドモ!」 まだ寝ぼけ眼のロールをだっこしているから派手に動けないのをいいことに、ディーノは抱きしめる腕に力を込めて離さない。 するといつもはマイペースなヒバードも、肩の上で「ギュウギュウ!」と羽をぱたぱたさせた。 「…後で、覚えてなよ」 「ああ。じっくりな」 そんな一見親子のような、見ているだけで和むような光景を、扉の外から眺めているのは大の大人二人。 「…どこから突っ込んで良いか分からないんですが」 そう言ったのは、ロールが起きた後にいつもミルクを飲ませている草壁だ。手にはもちろん、人肌に温めたミルクの哺乳瓶。 「まぁ、放っておけ、気にしていたらやってけねーぞ」 「ええ、そうなんですが」 「ボスの事は、恭弥に任せてたら問題ないさ」 「ディーノさんの事は何でも分かってるんですね」 「小さい頃から見てるからな。草壁もそうだろ?恭弥のことなら何でも知ってるんじゃねーのか」 「あなたほどじゃありませんけどね」 草壁は扉をそっと閉めると、苦笑いを浮かべながら思った。 確かにあの二人はすごい。すごいけれども、ロマーリオも負けてないくらい、すごい人だと改めて感じた。 2012.4.8 |