お日様日和〜ひばりんの逆襲〜(DH+aninmal)





かぷっ。
夜の営みの前の、甘いひと時。
肩にちくりとした痛みを覚えたディーノは、絡んでくる恋人に言葉とは裏腹の甘い声音を投げかけた。

「こら、恭弥!悪さすんな」
「いーじゃない。あなたの血美味しいんだもん」
「血って…。お前、吸わなくても大丈夫だって言っただろ?どうせならこっちにしろ」

会話の最中も色んなところをはむ、と甘噛みする雲雀の腕をひくと、尖った唇をやんわりと奪う。ぷるんと震えるそれはやわらかくてとても甘い。

「んっ…、」

思う存分味わっていると、さすがにしつこかったのかトンファーが飛んでくる。

「てて…お前、どこに隠し持ってたんだ。っていうかまだそんな古いもん持ってんのか?」

ディーノの言うように、雲雀のトンファーはかなり古い。柄の部分は薄汚れてしまっているし、至るところに傷がついている。

「ボロボロじゃねーか。新しいの買ってやっから」
「いらない」
「なんでだよ?」
「…覚えてないなら、良い」

突然機嫌の悪くなった雲雀はそのままベッドにもぐりこむと、布団を頭からかぶった。小さい頃から変わらない、「話しかけるな」「触るな」「構うな」の姿勢だ。こうなるとどれだけディーノが下手に出ようと、機嫌が元に戻ることはない。
けれど。
ほんの僅かの隙間から忍び込んできた二匹が相手だと、その限りではなかった。

「ヒバリ、ヒバリ」
「クピ」

2匹が傍まで寄ってくると、雲雀は布団からひょっこりと顔を出した。

「…きたの」
「イッショ、ネル」
「キュ!」

ヒバードとロールが布団に潜り込んでくると、雲雀も表情を和らげる。そして振り向くと、

「寒い」
「え?」
「隙間が空いて寒い」

雲雀とディーノの間には僅かな隙間。
つまりは早く入れ。素っ気ないながらも雲雀にしては甘い睦言を返されると、ディーノの頬も自然と緩んだ。

「ああ。さんきゅ」

空気を読んだ小動物は二人の邪魔にならないように、雲雀の頭上や反対側の肩口ですやすやと眠り始めている。
ディーノも同じように布団を被ると、雲雀と小動物を包み込むように大きな布団ごと、ぎゅ、と抱きしめるように腕を回した。

「ちょっと、重いよ」
「じゃあこれは?」

雲雀の頭を少し浮かせると、その下に腕を回す。手のひらにヒバードの毛先がふわりと触ってくすぐったいが、それよりも感じるぬくもりが愛しい。

「堅い…」
「そう言うなって。ほら、もう寝るぞ」

辺りを静かに照らしていたスタンドの明かりを消して、ディーノは後頭部にキスをしながら目を閉じた。寝付きの良いディーノの寝息が次第に聞こえ始めるのもいつもの事だ。
そんな隣で、雲雀は息を潜める。何度隣で寝ても慣れない。動悸が激しくて眠れない。

「キュ?」

それに気づいたロールが心配そうに見上げてくるが、雲雀は大丈夫だよ、と頬を撫でてやった。
ディーノはぐっすり寝ている割に、自分を抱く手を離そうとはしない。力強く暖かい、腕。そんなギャップのあるアンバランスさに、いつも調子を崩されるのだ。

(へなちょこの、くせに)

とてつもなく心を乱される。かき回される。平常心を保つために機嫌悪くしても彼には通用しない。
トンファーだってそうだ。初めて会ったとき――護身用にとディーノからもらった大事な大事な雲雀の宝物。ディーノはもちろん覚えていないけれど。
時々苦しくなることもある。
けれど、今はそれで充分だった。大事な想い出を抱えるのは一人で充分。
感傷に浸りたいわけでも、忘れたことを咎めているわけでもない。ただ、あのときがあるから今がある。それは自分にとっての始まりだ。
そしてディーノにとっての始まりがあるなら、それを大事にしてくれればと思う。今に繋がる何かがきっとあるはずだから。

「きょ、や…」

寝言を放つディーノに、雲雀は苦笑いを浮かべながら目を閉じた。

おやすみ。

少しだけ堅い腕枕に身を任せながら、訪れる眠気にそのまま身を任せた。


2012.10.8→2012.10.23



RM6ひばりんプチ「悪魔谷2-4」で配布したペーパーより、本編その後。
ひばりんとディノさんの絡みをもう少し書きたかったです。
ペーパーは結構装丁細かくしたので珍しくお気に入り。
年齢は曖昧です。



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