心にヒカル、灯火(骸誕2012/骸雲)


ちゅ、と頬に寄せられた唇のくすぐったさに、雲雀は小さく声を漏らした。

「ん…っ、」

それは感じているというより、思わず漏れてしまった声。
慌てて口を閉ざす仕草にさらに羞恥を感じたのか、漆黒の眼差しが宙を舞う。
そんな反応が面白いのだろう。骸は啄むようなキスを繰り返した後、文句を言われる前に深い口付けを施してきた。
抵抗はなかった。
それどころか色香に満ちた表情と背中に回された腕で、感じている事が知れ夢中になって貪る。

(もっと、見たい…)

いつもは淡白でクールな雲雀が我を忘れ、快楽を覚えている様はいつになく官能的だ。骸が与える行為を全身で感じ、縋るような眼差しはとても婀娜やかで理性を奪うには十分だった。
もっともっと深く。ひたすら貪欲に―――。

「…むく、ろっ!!」

無意識に啄ばんでいると、雲雀がぐい、と体を押し返してきた。

「どうしましたか?」
「…何か、変だよ」

骸は身体を起こすと、いたずらが見つかった子供のように笑う。

「ばれましたか?」
「ばれた、って…なんのつもり」

雲雀は眉根を寄せた。
いつもならもっと優しく触れてくる指先が、今日は意地悪い。決して大事にされたいわけではないが、翻弄されるまま相手が優位に立つことはあまり好きではなかった。
それは骸も知っている筈。

「もっと色んな顔を見たいと思ったんです」
「色んな顔?」
「そうです。どういう時にたくさん感じてくれてるとか、喜んでもらえるとか――」
「…悪趣味だね」
「んなことないですよ。ほら」

骸が雲雀の腕を引き寄せるとあっけなく小さな身体は腕の中にすっぽりと納まった。密着したがゆえに分かる骸の性を感じ取った雲雀の両頬にさっと赤みが差す。

「分かるでしょう?悪趣味ではなく、ただ愛しいからです」
「…し、らないよ。離して」

雲雀が拒絶を露にしても、骸は気にせず続けた。

「離しません。恭弥のことは好きです。愛しています。だから大事にしたいし、困らせたくありません。――ただ、優しく接するだけでは物足りないって感じる事もあるんです」
「優しくって何?そんな事をされても嬉しくないよ。咬み殺されたいの」

雲雀が本気になって睨むと、骸は苦笑いを浮かべた。

「すみません。ただ、心配になったんちゅ、と頬に寄せられた唇のくすぐったさに、雲雀は小さく声を漏らした。

「ん…っ、」

それは感じているというより、思わず漏れてしまった声。
慌てて口を閉ざす仕草にさらに羞恥を感じたのか、漆黒の眼差しが宙を舞う。
そんな反応が面白いのだろう。骸は啄むようなキスを繰り返した後、文句を言われる前に深い口付けを施してきた。
抵抗はなかった。
それどころか色香に満ちた表情と背中に回された腕で、感じている事が知れ夢中になって貪る。

(もっと、見たい…)

いつもは淡白でクールな雲雀が我を忘れ、快楽を覚えている様はいつになく官能的だ。骸が与える行為を全身で感じ、縋るような眼差しはとても婀娜やかで理性を奪うには十分だった。
もっともっと深く。ひたすら貪欲に―――。

「…むく、ろっ!!」

無意識に啄ばんでいると、雲雀がぐい、と体を押し返してきた。

「どうしましたか?」
「…何か、変だよ」

骸は身体を起こすと、いたずらが見つかった子供のように笑う。

「ばれましたか?」
「ばれた、って…なんのつもり」

雲雀は眉根を寄せた。
いつもならもっと優しく触れてくる指先が、今日は意地悪い。決して大事にされたいわけではないが、翻弄されるまま相手が優位に立つことはあまり好きではなかった。
それは骸も知っている筈。

「もっと色んな顔を見たいと思ったんです」
「色んな顔?」
「そうです。どういう時にたくさん感じてくれてるとか、喜んでもらえるとか――」
「…悪趣味だね」
「んなことないですよ。ほら」

骸が雲雀の腕を引き寄せるとあっけなく小さな身体は腕の中にすっぽりと納まった。密着したがゆえに分かる骸の性を感じ取った雲雀の両頬にさっと赤みが差す。

「分かるでしょう?悪趣味ではなく、ただ愛しいからです」
「…し、らないよ。離して」

雲雀が拒絶を露にしても、骸は気にせず続けた。

「離しません。恭弥のことは好きです。愛しています。だから大事にしたいし、困らせたくありません。――ただ、優しく接するだけでは物足りないって感じる事もあるんです」
「優しくって何?そんな事をされても嬉しくないよ。咬み殺されたいの」

雲雀が本気になって睨むと、骸は苦笑いを浮かべた。

「すみません。ただ、心配になったんです」
「心配?」
「ええ。あなたの周りにはたくさんの人がいて、皆が慕って従っています。恋人なら不安になるのは当たり前でしょう?」
「…バカじゃないの」
「ええ」

頷きながらも骸は嬉しそうに微笑んだ。逆に雲雀の沸点は高くなるばかりだ。

「くだらないよ。この10年、何を見てたの。誰よりも真実を映す眼差しがあるくせに、僕の考えている事が分からないの」
「…恭弥」
「これ以上くだらない話をするなら、鳥と遊んでいる方が良い」

そう言ってベッドから降りようとする体を強い力が迷いなく引き止めた。それが分かっていたのだろう。雲雀もたいして抵抗せず、大人しくその場に留まる。

「すみません。呆れましたか」
「呆れてない。ただ、君でもそんな事思うんだって不思議だっただけ」

本当に疑ったわけではない。いつも余裕を残す骸が些細なことで不安になっている様は、言葉とは裏腹に悪いものではなかった。むしろ優越感さえ感じるのは心地良く、自然と口元が緩んだほどだ。先ほどの仕返しというわけではないが、この10年で、雲雀も恋愛の駆け引きというものを覚えた。
全て目の前の男が実践で教えてくれた事だ。

「試したんですか?」
「君が先に言い出したんだよ」
「…確かに、その通りです」

骸は目の前の恋人を見やり、小さく嘆息した。
彼がとても呑み込みが早い人物であることを忘れていた。そして付け加えるのならば、雲雀は強い。些細な感情一つで悩んだり惑ったりすることはほとんどない。
だから、こそ。
その視線が揺るぐところが見たいのだ――と骸は思う。

けれども、骸がそんなことを心に残している事など思いもしないだろう。

「ねぇ」

その時だった。
まだ感情を持て余している骸の首へ、扇情的な言葉とともに細いしなやかな腕が回される。

「恭弥?」
「何を焦っているのか知らないけど…君とのキスは嫌いじゃないよ。全部気持ちが良いし、あったかい」
「…キスだけですか?」

震えるような口調に、雲雀は笑みを零した。

「本当に六道骸なの。情けないね」
「あなたの前で『六道骸』でいるつもりはありませんよ。言ったでしょう?ボンゴレも黒曜も関係ないと」
「僕には関係ない」
「数年前、誓ったはずです。僕の心はただ一人のためだけにあると」
え、二人だけの密な時間を楽しもうと項にかかる黒髪をさらりと掻き揚げると、露わになった白い肌が小さく震える。
そしてまっさらな美しい艶肌に薄い花弁を施すようなキスを繰り返した。

「…っ、ちょ、くすぐったい」
「くすぐったいだけですか?」
「…っ、ぁ、」

今までの戯れるそれとは格段に違う深い口付けを施すと、甘い声が抜けた。慌てて口元を覆う手を壁に縫いとめて、本格的な口付けを交わす。

「ん、…や」
「今までで一番嬉しいバースデーですよ。ですから、お礼をさせてください」
「これの、どこが…っ、…」
「嫌いじゃないでしょう」

雲雀が振り解こうとしても、本気になった骸には到底敵わない。結果目で訴える事になったそれは、今の骸にとって煽るものでしかなかった。
可愛くて濃艶的。これよりも愛しい存在を知らない。
そして本格的に愛しあおうとシャツの隙間から手を差し伸べた時。
扉の向こうから雲雀を呼ぶ派手な鳴き声が耳に届く。

「キュウウウウッ!」

この甘えたような可愛らしい声は、はりねずみのロールだ。まだ幼いロールは雲雀がいないと悲痛な鳴き声をあげることが多々あった。そしてそんなロールを雲雀が可愛がっていることも知っている。
案の定、下から挑発的な笑みが飛んでくる。

「残念だね。タイムリミットだよ」
「…そのようですね」

さすがにこうなった以上、事を進める気はない。
身だしなみを整えするりと出て行く雲雀の背中を見送りながら、骸も苦笑いを浮かべて後に続く。

本当に、久しぶりの逢瀬だというのに大人しく愛を語らう時間もないとは。

だが、雲雀が他の誰かに目を向け愛情を注ぐのは嫌いではなかった。彼が心豊かになる分心配は尽きないが、自然と骸にも幸福が舞い込んでくる。
雲雀が嬉しいと自分も嬉しいし、いつまでも笑顔でいて欲しい。

雲雀に言わせればくだらないと言うだろうが、二人で分け合うことの愛しさに改めて心に日が灯る喜びを噛み締めていた。


happy*Birthday!


2012.06.09




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