たまごの気持ち(リボ風←ヴェル)


※学園パロ風味
※風とヴェルデが幼馴染設定
※風は保健室の先生、ヴェルデは科学の先生


「――そういえば、風」

花の便りもにぎやかになり始めた4月も半ば。
医務室で珍しくも午後のコーヒータイムを楽しんでいたのは、いつものように授業を終え暇つぶしにやってきたヴェルデだった。
元々風とは幼馴染の間柄で、リボーンを目の敵にしていたヴェルデだったが、二人の仲を知ってからはより執拗に出入りするようになった。
だからといって何をするわけでもない。ただ隣でコーヒーを飲み、風の横顔を見ては不適な笑みを浮かべているだけ。
仕事の邪魔をしているわけでもないし、他に生徒がいるわけでもない。とはいえさすがに気が漫ろになると風が口を開こうとした時だった。

「風、一つ聞きたかったんだが」
「え?」
「一体あいつなんかのどこが良いんだ?」

あいつ、と言うのは考えるまでもなくリボーンだろう。
他人にあまり干渉しない風だったが、さすがに二人の仲が円満でないことは知っていた。
リボーンは何でもそつなくこなし常に誰かの恨みを買ってもおかしくない存在だし、ヴェルデに至ってはそれ以上だ。

「いきなりどうしたんですか」
「秘密主義で何を考えているか分からない、目的のためならば相手を陥れる事も平気でやってしまうようなやつだってのは知ってるだろう」
「それは言いすぎです。というか、ヴェルデにだけは言われたくないと思いますけどね」
「相変わらずだな」

ヴェルデから笑みが零れた。
確かにその評価は間違っていないが、ならば風はなぜヴェルデを拒否しないのか。
その答えは簡単だった。リボーンとヴェルデは対極にいるようで非常に近しいところにいる。だからこそ、均衡を保つことが出来て、互いの存在が損なわれないのだ。
それと同時に湧き上がる不安をヴェルデはぶつけた。

「アイツは要領が良い。ただ、振り回されてないかと心配になる」
「大丈夫です。リボーンですから」
「言われるまでもないと?」

にやり、とヴェルデの眼差しに笑みが宿った。ヴェルデとてリボーンが嫌いではない。ただ、弟のように大事にしていた風をあっさりと奪われて心配になっていただけだ。それと少しのやっかみも入っていたのだろうが――それは、時間が解決すること。
まっすぐな気持ちをぶつけてくるのは、リボーンもヴェルデも大差はなかった。それは互いに熟知しているところだろう。

「で、風はあいつのそんな所が良いと」
「秘密です」

にっこり笑顔で告げる風に、さすがのヴェルデも苦笑いを浮かべた。こんなやさしい眼差しを向けるのは、風にだけだ。

「秘密…か。確かに、一々言う事ではないな」
「ヴェルデはどうなんですか?」
「私か?そりゃあ勿論」

一呼吸置いて、風の言葉を追うように重ねられた。

「秘密だ」


そんな二人のささやかな午後。
医務室の外で渦中のリボーンが複雑な心境で立っていたことを、二人は知らない。



2012.07.11


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