Vuoi Sposarmi?(2720/animal)


「恭弥、結婚してくれないか?」
「やだ」
「…即答かよ」

雲雀が20歳を迎えた年。
プロポーズの日だという、雲雀が正式にボンゴレファミリーに籍を置く事を決めたその日。
ディーノは意を決して並盛で一番だという花屋に包ませた色とりどりの美しい花束と共にやってきたのだが、その決心は無残にもたった二言でうちのめされた。

「少しは悩めよ。高校の時は成人したら考えるって言ってたじゃねーか」
「状況が変わったんだ」
「状況?」
「先約がいてね。そっちを受ける事にした」
「先約ー!?」

耳元でディーノが大声を出すと、雲雀は顔を顰めたが、すぐににやりと不敵な笑みを残した。

「そうだよ。残念だったね」
「誰だ?そいつ」

ディーノの眼差しが、ぎらりと一変した。
普通のものならばそれだけで一瞬ぞくりと背筋を凍らすほどの冷たい双眸。
だが、雲雀は表情を変えずに指先をディーノの目に差し出す。

「え?」

もちろん、そこにいるのは――

「ミードリータナービク♪」

雲雀と出会ったときからずっと傍にいる、黄色い小鳥。
まさか、とディーノは2人を交互に見やった。

「ヒバード…か?」
「ヒバード、ヒバード!」
「ヒバードには聞いてねぇ」
「キイテナイ、キイテナイ!」

この際ヒバードのことは無視する事にして、ディーノは雲雀に向き直った。すると、先ほどとは打って変わった困ったような笑みをぶつけてくる。

「だからね。あなたが、この子とロール」
「キュー!」

雲雀が視線を向けた先で、はりねずみが顔をひょこりと出す。匣兵器のロールはいつも雲雀の胸元におさまっている。

「丸ごと面倒見てくれるならもう一度考えても良い」
「一緒、一緒!」
「クピ!」

雲雀の言葉が分かるのか、ヒバードが嬉しそうにディーノの周りを飛び回り、いつもは気弱なロールも手を差し出すだけで擦り寄ってくる。ディーノが優しく抱き上げると、くすぐったいのかクピ、と小さく鳴く様は可愛らしい。

「ヒバード、ロール」

ディーノは息を呑み屈みこむと、二匹を正面から見上げた。

「恭弥と一緒に家族になってくれるか?」
「カゾク、カゾク!」
「クピクピ!」
「…決まりだね」

いつの間にか雲雀は花束を手にしていた。ディーノからの愛の証を受け取ったように、首を傾げて笑う。

「仕方ないから、あなたの隣にいてあげるよ」
「…Grazie、恭弥」
「ただ、うちのボスの了解を先にとることだね。後で驚かれるのもからかわれるのもごめんだよ」
「ああ」

ディーノが雲雀の肩に手を回すと、小動物は気を利かせて2人から離れて行った。
そして、額にキスを送りながら、愛の言葉。

「Vuoi Sposarmi?」
「――Con piacere」

2人を祝福するように、窓から入り込んだ優しい風が小さな音を立てた。


2012.06.04→2012.07.09


プロポーズの日ということで!
ありがとうございました。



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