3 「風…やっぱり、現場に行くのやめねーか?」 「は?」 部費争奪戦が始まって直ぐ。 そろそろ怪我人も出るだろうと救急箱を手にした頃、コロネロの言葉に風は眉を顰めた。 「突然、どうしました」 「いや、だって…危ないだろ」 「それはあなたも同じでしょう」 コロネロは肩で大きく息を吐き、だよな、と嘆息した。リボーンに言われて提言してみたが、風に通じないことくらいリボーンにも分かっているはず。知っていながら命じるのだから、全く良い性格をしている。 (恨むぜ、リボーン…) 「じゃあひとつ約束しろ。一人にならねーって」 「何故です?手分けしたほうが早いですよ」 「…危ないだろ」 「危ない…?そんなに危ないことはないと思いますけど…」 「ま、そーなんだけどな…。ああああ、もうっ」 「コロネロ…?」 風に誤魔化しは通用しない。コロネロはこの際仕方ない、と切り札を出すことにした。 「リボーンには口止めされてたんだがな、ヴェルデのやつが風を狙ってるらしくて、目を離すなって言われてる」 「なぜヴェルデが?」 狙うならリボーンでしょう、と風の呆れた眼差しがコロネロを射抜く。 「いや、だから」 「リボーンの口車に乗せられているんですよ」 適当にあしらわれて、さすがのコロネロも惑った。 それは、リボーンの弱点が風だから。そしてそれをヴェルデも知っている。 風は気付いてないようだが、互いに想い合っているくせに、一向に添い遂げようとしない二人に振り回されることになる身にもなって欲しい。 さすがにそこまでは言えず口篭るコロネロに、風は笑みを浮かべた。 「ありがとうございます。でも、いくらヴェルデでも無茶はしないはずですよ。部費が目的とはいっても、彼ならどうにかして裏金を作るでしょうから」 「それはそーだが…」 「ですが、善処はします。ヴェルデには気をつけます」 「絶対だな」 「ええ」 彼が何を考えているか分からないが、リボーンの足手まといになりたくない気持ちは風も同じだ。それならば、自分が取る選択肢は一つ。 「約束します」 「悪いな」 ようやく安堵の表情を浮かべたコロネロに、風はやや緊張した面持ちで窓の外を見やった。 …リボーンの負担にならなければ、と思っていた矢先。既に重荷になっているような気がして、こそりと小さなため息を漏らしたのだった。 2012.2.14 |