僕だけのたからもの


中途半端な小話。
ロール主体でヒバード、雲雀さんが囚われの身です。
ディーノさんは名前だけです。

*

ぽかぽか、あたたかいお日さまが照っているある日の午後。
雲雀さんと僕とヒバードがやってきたのは、大好きな並盛公園。
ここは木がいっぱいで広い割りに人が少ないから僕やヒバードはもちろん、雲雀さんもお気に入りの場所。

お昼ごはんを食べた後、日向ぼっこをしようと雲雀さんが連れて来てくれた。
しかも、今日は雲雀さんの大好きなディーノさんも後で来るって言っていたから心なしか雲雀さんの機嫌も良くて嬉しい。

だから、あんなことが起こるなんて夢にも思わなかった。





「…っ」
「キュキュ!」

雲雀さん大丈夫?と僕が心配そうな顔をすると、雲雀さんは痛めつけられた身体を抱えながらも笑顔を見せてくれた。

「大丈夫だよ。ロールは怪我ないね?」
「キュ!」

大丈夫だよ。だって、雲雀さんとヒバードが助けてくれたから。
けれど、そのヒバードはここにはいない。

あれからすぐ、黒い服を着た連中が車で突っ込んできてあっという間に僕達は車に引きずり込まれた。
いつもの雲雀さんならすぐにやっつけちゃうんだけど、ヒバードと僕はあっさり捕まってしまって盾に取られると、雲雀さんもなす術がなく武器を取られていっぱい縛られた。

そして薄汚い部屋に閉じ込められて、もう大分経つ。
僕は自由に歩きまわれるけど、雲雀さんは柱にしっかり縛られて身動きが取れずにいた。

彼らの狙いは、ヒバードがうっかり食べてしまったマイクロフォロム。難しいことは分からないけれど、麻薬密売ルートのリストだとかって言っていた。
雲雀さんはヒバードを助けてあげれなくて、悔しそうに拘束された身を捩るけれどうまくいかなくて、手首からは擦れて血が滲んでいる。
僕が慌ててそのロープかじろうとすると、雲雀さんに止められた。

「ロール、あそこ見える?」
「キュっ?」

雲雀さんが差した方を見やれば、窓の桟に僅かな隙間。
それは僕が通れるか通れないかくらいの。

「僕はここから出てあの子を探すから、君は呼んできて」
「キュ?」
「きっと跳ね馬が近くにいるはずだから」

彼との待ち合わせ時間はとうに過ぎている。
連れ去られる前、彼にしかわからないメッセージを置いてきたからきっとわかるはず。

雲雀さんの力強い眼差しがそう訴える。

「キュウウ」

少し、怖い。
今まで雲雀さんの傍を離れたことなかったから。

そんな僕の心情を察してくれたのか、雲雀さんは表情を柔らかくしてくれた。

「大丈夫。ロールなら、できる。それにきっと危なくなったらあの人が助けてくれる」

「キュ!」

ディーノさんの事だと言うのはすぐ分かった。
雲雀さんが言うなら、怖くない。
僕は明るい声で鳴いて、必死に窓をよじ登る。
最後に一回だけ振り向くと、雲雀さんが見守っててくれた。

「気をつけて」
「クピィ!」

だから、怖くない。

雲雀さんとヒバードを助けてあげられるのは、僕しかいないんだから。

絶対に僕が助けてみせる。


2012.2.18


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