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それから、数日後。
リボーンが対ヴェルデにとった対策はとんでもないものだった。

「部費争奪戦…ですか?」

いつものように生徒会室で雑用をしていたリボーンは、風の入れたコーヒーを飲みながらそう切り出した。
その名の通り、文化部も運動部も混じえ生徒会予算であまった資金を部費として特別出資するという目論み。そこで優勝した部に全てを渡すというものだった。

「もちろん生徒会は別だがな」
「争奪戦って…本気ですか?それこそヴェルデがどんな方法を使ってくるか…」
「だろうな」
「それに、どんな方法を取るつもりですか?争奪戦なんて、どう見ても文化部が不利です」
「そんなことはねーぞ。確かに体力も必要だが、知力も運もいる」
「どういうことですか」

風の言葉にリボーンがにやりと笑みをこぼす。

「あるものをこの学園の敷地内に隠す。それを探し当てたものが優勝だ」
「あるものとは?」
「それは、秘密だ」
「そんな乱暴な…」

リボーンの乱暴は今に始まったことではないが、今回ばかりは酷すぎる。
生徒会役員である風も今聞かされたばかりだし、予算が余っているというのも初耳だ。会計のコロネロが聞いたら発狂するだろう。
だがリボーンに反論しても結局はそのまま無理やり遂行してしまうのがいつものパターンだし、そんな彼を補佐するために自分たちがいる。

「怪我人が出るかもしれませんね」
「まあな」
「で、私は何をすれば良いんですか」

こうなったらとことん付き合うしかない。
覚悟を決めると、その言葉を待ってたかのようにリボーンが小さく笑う。

「さっきも言っただろ、恐らく負傷者が多く出る。医務室はシャマルがいるから大丈夫だが、風は現場を見回りながら怪我人の手当てをしてやってくれるか。部屋は会議室を用意してるから」
「分かりました。リボーンとコロネロはどうするんですか」
「コロネロもお前と一緒に怪我人の対応に当ってもらう。俺は標的だからな」
「…って、もしかして『あるもの』ってリボーンなんですか!」
「風、声が大きいぞ」

窘められて、風は慌てて声を落とす。

「すみません。でも、いくらあなたでも…危なくありませんか」
「これくらいどうってことねぇ。それにあのヴェルデを欺くには、俺が相手をしねぇとな」

さすがに今回の件は、リボーンも黙っていられなかったらしい。とはいえ、こんな悪ふざけた催し物をするあたりは、リボーンらしいが。

「…とに、もう。とにかく気をつけて下さい」
「おめぇもな」
「…?私は別になにもないと、思いますが」

不思議そうに首を傾げる風に、リボーンは訝しげな視線をやった。

(…やっぱり、気づいてねぇか)

あの時のヴェルデの眼差し。それは明らかなリボーンへの挑戦状だった。
普段は驚くほど細かい事を察し裏をかくことに長けているのに、自分の事になると途端に鈍くなる。それは昔から少しも変わらない。
だからこそこの争奪戦を企画したのだが、ヴェルデがどんな手を使ってくるのかはさすがのリボーンでも予測がつかない。わざわざ自分を標的にしたのもヴェルデの目をこちらに向けるため。彼が自分と本気でやりあったがっているのも知っているし、リボーン自身そろそろ好きにさせるのは限界だと踏んでいた。
野放しにしていると、第二のヴェルデが現れないとも限らない。

(だが…)

恐らくヴェルデには自分の弱点は知られている。そう。リボーンの弱点でありヴェルデの弱点でもある――風だ。
彼自身リボーンと互角なほど体術には長けているから、よほどのことがない限り心配はないが、何せあのヴェルデである。
警戒するに越したことはない。

「リボーン?どうしましたか?」
「いや、なんでもねぇ」

軽く首を振ると、派手に扉が開かれコロネロがやってきた。
リボーンは肩で息を吐くと、もう一度最初から話し始めた。


2012.2.11




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