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並盛高校生徒会は、歴代でもトップを誇る指導力を持つリボーンの独裁の元、統治されていた。生徒会長のリボーンを筆頭に、書記の風、会計のコロネロなど生徒だけでなく教師までも逆らえない3人の圧倒的権力は、隣の学校にまで浸透するほどだった。
また部活動にも力を入れており、運動部は都内の合同体育祭では常に入賞、文化部においても億単位での資金が動くと言われているほど、活気に溢れている。そんな活動において生徒会から支給される部費は、1年間の活動内容に見合わせて毎年大規模な会議が何度も繰り返され、最終的には生徒会長であるリボーンが決断を下すこととなる。
そんな会議を目前にした、2月の半ば――生徒会室はいつもにも増して緊張感に包まれていた。





「では、どうしても譲歩はできないと?」
「当たり前だろ、コラ!何のための生徒会だ」

もう何度も繰り返された会話を前に、風はやれやれと肩で息を吐き、リボーンは静かに事の成り行きを見守っていた。
科学部の部長であるヴェルデが生徒会室にやってきたのは彼是数時間前。昨年思ったような部費が支給されず、違法とされている裏金で部活動を続けたことを理由に、真相の是非を会計であるコロネロが問い質そうとした矢先、ヴェルデが先手を打ってきたのである。
実績を誤魔化し活動してきた部に対して部費の調整など応じる事が出来るわけもなく、先ほどから半ば押し問答になっている。

「やれやれ。仕方ない、出直すとしよう」
「ヴェルデ」

風が声をかけると、ヴェルデがちらり、と視線を寄越した。

「退いても無駄ですよ。あなたも分かってるはずです」
「知らないね。ただ、後悔しないと良いのだが」

ぱたん、と閉じられた扉にようやく室内が安堵の息に包まれる。

「…大丈夫でしょうか」

滅多なことでは動じないリボーンも、先ほどから難しい顔を浮かべている。

「変なことをやらかさねぇと良いがな」
「そうはいっても、やつの要求を呑む訳にもいかないだろうが。とりあえずは誰かに見張らせとくか?」
「いや、あいつのことだからな。変なことはしねぇ方が良い」

リボーンの言う通りだった。ヴェルデは高校生の身でありながらすでにいくつもの研究や開発商品を手にかけ、ありとあらゆる大きな賞を受けている。名高い研究者や発明家が一目置く存在。それだけでなく、自白剤や違法とされる危険な薬物も開発しており、その一部はマフィアに流れているという。
優秀な生徒会が最も手を焼いているのが、ヴェルデだった。

「リボーン、私から言っておきましょうか。彼とは旧知の仲ですから何とか言い包めれるかもしれません」
「ダメだ」

風の申し出を、リボーンが即座に拒絶する。

「昔、同じ事を言ってとんでもねぇ目に遭ったのを忘れたのか」
「それは、そうですけど…」

痛いところをつかれて、風が口篭る。
いわゆる幼なじみという間柄だが、ヴェルデは風を虐めたり利用したりすることが好きだった。昔は優しくて風の事を守ってくれたりもしたから、風にとっては今でもその時の思い出が強く、ヴェルデの本性を忘れてしまうのだ。

「だが、リボーン。野放しにしてても厄介だぜ」
「分かってる」

リボーンはそれから考え込み、すっかりぬるくなった珈琲を何度も口に運んだ。
こういう時のリボーンには何を言っても無駄である。風とコロネロは顔を見合わせると、それぞれ溜まっている仕事に手をつけ始めた。


2012.2.7




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