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「恭弥!」

ディーノが応接室に駆け込むと、いつものように小動物が飛んでくる。

「ハネウマ、ハネウマ」

「お、ヒバード。久しぶりだな――って、お前どうした」

ディーノの肩にぼて、っと降り立った小鳥は、明らかにお腹が出ていて小鳥とは言いがたい重量が肩にのしかかる。

両の手にとってみれば、違いは一目瞭然だった。
確実に、太っている。

「めちゃくちゃ重いじゃねーか。どんだけ食べたんだ、お前」

「ピィ」

可愛らしく鳴くものの、ふわふわの毛も肉に圧迫されているようだ。

「あなたが来ないから」

後ろから冷たい声が背中に飛んできて、振り向けば思ったより機嫌の悪い雲雀が睨みつけてきた。

(うわぁ、機嫌…悪…)

それは自分のせいだし傷つけたかと思うと胸が痛くなったが、久しぶりに会えた事が嬉しくて、顔が自然と緩むのを必死に引き締めた。

「…へんな、かお」

「うるせ。それより、コイツどーしたんだ?こんなに短期間で太って」

「あなたのせいだよ」

先ほどと同じ事を言われて、ディーノは眉を顰めた。
ヒバードが自分のせいで太ったなど全く見に覚えのないことだった――が、机の上の残骸を見て納得する。

広げられた幾重ものお重箱に綺麗に備え付けられている料理の数々だったが、それのどれもこれもに少しずつつついた後がある。
しかも「寿」と彩られた紅白かまぼこにはロールが必死にかぶりついていた。

「…あー…これ、食ったのか」

「だって、腐っちゃうから」

「草壁は?アイツならこれくらい食うだろ」

「なんであなたのために作ったものを、副委員長に食べさせなきゃいけないんだい」

しれっととんでもないことを言い放つ雲雀に、ディーノは慌てて口元を押さえた。

(う、わぁ…)

やばい。
今のは、相当きた。

今まで干からびていたものが一気に溢れて抑え切れないほど――。

「それなのに、あなた来ないし」

だから、ヒバードとロールに全部食べて良いよって言ったのは昨日の事。
それでも全部はとても食べきれないから残りは捨てようと思っていたと小さな口が紡ぐ。

「なんか、怒ってるし。だから――」

その先は言葉にならなかった。
いきなりディーノに抱きすくめられ、その力は痛いほどだった。

「ちょ、痛い!」

「ごめん。今更だけど…俺も食べたい」

「ダメだよ。もうあの子たちが食べてるから」

「良いって。どーせあいつらだけだと食べきれないだろ」

「じゃなくて、綺麗じゃないから」

おせち料理は味はもちろん、見た目が一番重要だった。
だから綺麗に少しでも見栄え良く彩りをした。だが、その面影は小動物があちこち突いたせいで今は全くない。

だから、と雲雀はほんの少し躊躇いながら、けれどはっきりと伝えた。

「一緒に作ろう。材料はまだあるから」

3日が終わるまで、あと少し。

ディーノの首に両手を回して抱きついてくる雲雀から顔は見えなかったが、きっと赤くなってる。
それを隠すために、ぎゅううと絡んでくる雲雀に、ディーノは優しく触れた。

「ああ。みんなで、つくろう」

そうしたら、きっととても美味しいものが出来る。

雲雀がディーノの為だけに作ってくれたおせち料理にも未練はあるけれど。

(今は、これで充分…)

「ピ」

「クピイ」

二人の周りを飛び回ったりよじ登るヒバードとロールに目もくれず、二人は長い長いキスを交わした。


――Uno! Buon anno!!


補足→一般的にはBuon Natale e Felice Anno Nuovoみたいですが、日本に合わせたという事で上記使ってます。またイタリアでは2日からお仕事のようですがボスは関係ないという事で広い心で読んで頂けたら嬉しいです*


2012.1.1


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