小さないたずら(2205:15)


「…恭弥?」

「…なに」

ディーノは、目の前の雲雀の姿を見て呆然としていた。
確かにそこにいるのは、雲雀だった。
だが、雲雀は雲雀でも――5歳の小さい、小さい、姿で。

「か、可愛い!!!!!」

言うなりぎゅぎゅぎゅーっと抱きしめると、腕の中の小さな身体が若干抵抗するが、今の体格差を考えるとかゆいくらいにしか感じない。

「離せ!」

「やだ。だって、お前可愛いし」

「殺す、絶対殺すっ」

「今のお前じゃ無理――って…あれ」

はた、とディーノは何かに気付いたように身体を少し離した。
5歳は5歳でも、しっくりこない違和感。

「…もしかして、恭弥?15歳の?」

「だから、僕だって言ってる」

つまり、10年バズーカーはバズーカーでも、身体だけが入れ替わったらしい。
それは決して珍しいことではないし、ディーノ自身耳にした事はあるがこうして本人を目の前にすることは、初めてだった。

「…なに、いやらしい顔してるの」

嫌な気配を感じ取った雲雀が辿辿しい足取りで、少しずつディーノから離れる。
――が、それより早く強い腕がそれを遮る。

「だってさ、本当に5歳だったら俺も後ろめたいんだけど、中身がお前だと思うと…別に気にならないっていうか」

「なに…、っん…っ!」

言うなり手を引かれ、小さな唇にキスをされて上擦った声が上がる。
キスは初めてじゃない。
身体も繋いでる。
けれど、いつもと違う感覚が身体中を駆け巡る快感の比は想像以上で一気に頭がいっぱいになった。

支配されるのが嫌で手をつき離れようとするのに、圧倒的な体格差のディーノはびくともしない。

「あれ、感じた?」

いつもより早いそれに、ディーノが嬉しそうに笑む。
足蹴りしても空振り、トンファーは重くて持てない。
仕方なく雲雀は自分の頭をディーノの腹にごつごつと何度もぶつけた。

「お、おい、やめろ!バカになる」

「だって、むかつく」

喋り方も舌ったらずな5歳の身体をした雲雀はどこもかしこも可愛くて、ディーノの情欲を煽るのに充分だったがこれ以上虐めると、本気で泣いてしまいそうだ。現に、大きな瞳の眦には既に大粒の涙が溜まっている。

「分かった、分かった。もうしない」

「なんでそんなに偉そうなの」

「もうしません」

「――じゃあ、いい…」

とりあえず、今日はな。
そんな言葉を飲み込み、ディーノは雲雀を連れて車へ乗り込む。

これからロマーリオやみんなにはどう説明しよう?
そんな現実的なことを考えている頭の裏で、明日は凶悪的に可愛い雲雀に何をしようかと妄想していたら、またにやけてしまったのか小さな足蹴りが隣から飛んできた。

そんな仕草も可愛いと思いつつ、ディーノは必死で口元をぎゅ、と引き締めたのだった。


2011.12.20→2012.1.2


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