\-xi 出生異聞奇譚xi 結果

「はい、何でしょうか」

 ディオニュソスファミリーを壊滅させて数日後、私は久々にXANXUSからのお呼び出しを食らった。何かしただろうか。最近は殺しの任務はしていなかった為、久々に任務でもあるのだろうか。

「これが俺の元に届いた」

 そこには開けられた封筒。宛先はヴァリアーになっている。時期的に、アレだろうか。大方の目星をつけ中身を確認する。
 中には検査の結果が載っていた。私と、あのアレッシオの。検査所には名前は出さず私と某X氏という事で提出したのだが。

「何で私の所じゃなくてXANXUSの元に届いたんだろうね。ほんと検査所の人も適当だなあ」
「そうだな」
「中見ちゃったでしょ?バレちゃうじゃん、私がまあまあ鉄分足りてないの。よく貧血で倒れず仕事してますよねってかんじ」
「倒れんなよ。面倒くせえ」
「勿論、自己管理はきちんとしてるよ。肌の調子は相変わらず最悪だけどね。あと何が足りないのかなあ。他はまあまあ良さげかな」
「ああ」
「ついでに血液検査までしてくれるなんてお得だね。健康診断ちゃんと受けてんのに。XANXUSはまともに受けてなさそう」
「俺はしなくても良いからな」
「何それ、めちゃくちゃわがままね」
「アレス、もう良い」


 そう言われて呼吸が止まる。息の仕方を一瞬にして忘れてしまったようだ。人間こんな風になるんだなと実感していた。息が止まっていたのは長い時間のように感じたが、実際は3秒程度だったのだろう。


「別に、どうでも良いの。父親なんか。生まれた時からいなかったし」
「ああ」
「でもさ、まさかあんな奴が本当に父親なんてね。こんな事になるなら調べなきゃ良かった」

 検査結果、アレッシオと私は正真正銘の親子だった。ヴェリタ・ディオニュソスなんて名前を浮かべてみるも、何もしっくりと来なかった。やはり私は何者でもなくアレスなのだ。

「どうでも良いのに、何で調べちゃったんだろうね。嫌な気分にしかならないのに」
「それは仕方ねえよ」

 その言葉を聞いてはっとさせられた。XANXUSは調べて父と血の繋がりがないと知り、私は調べて他人と血の繋がりがあることを知った。ヴァリアーにはまともな親を持つ奴はいない為、誰に話しても同じだと思っていたが、XANXUSの場合は特別だ。
 真逆でいて、似ているのだ。状況を分かっているのが彼で良かったと思う反面、申し訳なくなった。


「ごめんね、こんな話に付き合わせて。でもこれで終わり。奴は殺したし、天涯孤独なアレスには変わりないよ」


 そう言うと、ふと体が暖かくなった。温もりに包まれているような……いや、包まれているのだ。

「泣け。涙は流さずとも、泣け」

 いつの間にか立ち上がったXANXUSが片手で私の頭を掴み、そのまま自分の体に私を押し当てているのだ。これを包まれていると表現できるかはさて置き、これが不器用な彼にとっての最大限の温もりの表現方法だということは容易に想像ができた。

「私だって涙が出るみたいなんだよ。人が入って来たら泣かせたんだって勘違いされるよ」
「誰も俺の部屋に許可無く入らねえからな」
「急用でも?」
「当然だ」

 流石というか、何というか。ともかく今はお言葉に甘えて肩を借りる事にした。こんな経験は二度と無いだろうからね。先にセックスしておきながら何言ってんだってかんじだけどね。そっと彼の腰に手を回したら抵抗はされなかった。まあセックスしましたしね。

「支えてくれるのがXANXUSで良かった」
「そうか」
「ねえ、座っても良い?」
「欲張るんじゃねえ」

 そう言いながらも私を連れて移動するXANXUSはツンデレさんだ。素直になれない、不器用な赤ちゃんだ。こんな男前な赤ちゃんがいてたまるかと思うが、リボーンを知ってる為否定は出来ない。あれは中身おっさんだけど。

「ん?」

 連れて来られたのは彼のベッドの前だった。ベッドに横になった彼は隣をポンポンして「来い」とアピールしてきた。いや、ハードル高いです。いやいや前に勝手にベッドに侵入したのを思い出してしまうんです。

「そんな私が人のベッドに入る節操ない人間に見える?じゃあ遠慮なく入らせて頂きます」

 思い出すもんは思い出すが、やはりこんな貴重な体験は捨てられない。XANXUS最大の優しさに触れたいのだ。いつからか胸の鼓動が大きいのも確かである。
 ベッドに忍び込むとXANXUSは満足気でぎゅっと私を抱きしめてくれる。ああ幸せだなあと思いながらそっと涙が流れる。そしてそのまま意識を手放した。

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