パスカルさんはいつも碌なことをしないから、ほんとに迷惑しています。
と、ヒューバートは言っていた。

 でも今日は、全然、まったく、そんなことない、と心からヒューバートに訴えたくなった。
 まぁ言ったところで聞き入れてもらえるわけがないし、それどころか打ちのめされるのは目に見えているが。

 なんでそうなるって?

 聞いてくれるか!?

 いやー実は、パスカルが今日のために薬を作ったらしくてな、それをヒューバートにぶちまけたらしいんだ。
 その薬ってのが、なんと!猫耳猫シッポが生える薬だったんだ!
 もちろんヒューバートには髪の毛と同じ綺麗な空色の耳とシッポが生えていたんだ。

『にゃんにゃんにゃんの日特別調合薬だよ〜』
『屈辱です…』
『ヒューバート、わたしとおそろい』
『ソフィ…』

 なんてやりとりが目の前で繰り広げられていたが、当の俺はというと、色々な衝動を抑えるのに必死になっていてよく聞いていなかった。




 そうこうしているうちにヒューバートは部屋に閉じこもってしまったんだ。
 パスカルは「1日経てば治るっしょ」とかなり楽観視しているし、シェリアは呆れながらも機嫌をとるための卵の買い出しに出た。

 俺はというと、

「よし、アスベル。ヒューバートをなだめてやれ」
「これはアスベルにしかできないことだよ」

 教官とリチャードの言葉に推され、ヒューバートの部屋に来ていた。
 拒まれるかと思ったが、以外とすんなり受け入れてくれたのだ。

 しかし、部屋に入れてくれたはいいものの、一言も喋ってくれない。
 椅子に座りこちらに背を向けたままだ。

 ただまぁ…シッポは揺らめいている。

 ここはあまり刺激しないほうがいいと分かっているのだが、どうしても己の衝動に逆らうことはできなかった。

「ぅにゃ!?に、兄さん!?」
「あ、」

 ぎゅっとシッポを握ると、ヒューバートの口からはまるで猫のような鳴き声が出てきた。

「ヒューバート、お前…」
「だっ、だからはにゃしたくにゃかったんですよ!それにゃのに兄さんがいきにゃり、へ、ヘンにゃことするから…」
「…うん、うん。分かったから、もう喋るな」
「……!!」

 そう言うとなにを勘違いしたのか、顔を俯かせてしまった。耳とシッポも感情とリンクしているのか垂れ下がった。

「やっぱり、気持ち悪い…ですよね、この喋り方」
「気持ち悪い?まさか!可愛いぞヒューバート」
「か、可愛いって…」

 そう言われたって嬉しくありません!
 なんて、真っ赤にして言われたらもう我慢なんてできっこなかった。

「ヒューバート…」
「へ?んっ、ぅ…っ」

 腰を抱き寄せ唇を合わせる。
 後頭部へ手を差し入れて逃がさないよう力を込めると自ら背中へ腕を伸ばしてきた。
 髪を優しく混ぜるように撫でると、空色の耳。
 その内側をそっと触るとびくりと肩が跳ねた。

「へぇ…ここ、いいんだな」
「ち…がいます!くすぐったいんですよ、って、あまり、さわら…、ん!」

 頭上の耳へ舌を這わすと面白いほど大げさな反応が見れた。

 このまま流せる!
 と思った矢先。

「ご飯だって、二人とも」
「そ、ソフィ!」

 いつの間にか居たソフィに気をとられて、腕の力を抜いた瞬間いとも簡単にヒューバートに押し返されてしまった。

「分かりました、すぐ行きます。いいですね、兄さん」
「あ、あぁ」

 なんだか心も体も不完全燃焼を起こしている。
 ソフィにあたるわけにもいかずもやもやしていると、ヒューバートがそっと近づいて顔を寄せてきた。



「続きは夜に、ね、兄さん」





To be continued...?


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続 か な い


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