出会いは、発見



高校生。
それは自由の象徴!
なんでも出来る。そんな塊。


だと思ってたのに…


「中学とあんまり変わらない…」


机に突っ伏して愚痴をこぼす。甘かったんだ。
高校生といっても1つ年が上がるだけなんだって事に、気づかなかった私が悪いんだ。
変に期待した私が悪いんだ…。


「うー…」


「それ、なんの動物のまね?」

「違うよ、まねなんかしてな…あれ、どちら様?」


横の席に座っている男の子。
どうやらこの子が話しかけてきたらしい。


「さっき、名前呼ばれてたの聞かなかったのか?」


「えっ名前?」


出席をとっていたって事だよね。


「私返事してない。先生!いますよ。吉野美奈子います!」


私が慌てて手を振り上げると、先生は苦笑しながら出席簿を開けてなにか書き込む。
ホッと一息つくと視線を感じて一気に赤くなる。


みんな見てる…


すとんと椅子に座ると、クラスメイト達も興味を無くしたようでまたざわざわと時間が動き始める。


はー。息を吐く。


呼吸止めてたから、苦しい。


「なんか、おまえ抜けてんのな」


「抜けてないよ。失礼な」


ぷいと顔を背けると、押し殺したような笑い声。


笑ったなぁー


「ひど」


「俺、安藤晃。よろしく、美奈子」


さっさと流されて、サクサク自己紹介されてしまった。


「…よろしく。安藤君」


「呼び捨てでいいよ」


「じゃあ、安藤?」


そしたら、その男の子…じゃない。安藤はまた笑い出した。
なんか、変な子。


「お前、変わってんね」


何科?
って聞かれたから答える。
同じだった。


「安藤も作詞好きなの?」


私達の科は、作詞作曲を中心に学ぶ学科。


「いんや。俺は作曲の方が好き」


「そうなんだ。良かったら今度聞かせてよ」


笑いかけると、彼も元気に笑った。
制服着崩してるし、雰囲気がちょっと怖かったけど。


仲良くなれそう。


「今、何個か持ってるから聞くか?」


iPodを差し出してくる。
私はイヤホンを受け取って耳に当てる。


聞こえてくるのは元気なバンド系の音。
アイドルポップスぽくもあって可愛い。この曲いいなぁ。


なんて、考えてたら。
ボーカルが入った。


「え?」


いつも、研究のために聞いてきた数多の音よりも、肉声的で、だけど機械音が混じったその声はー…


「…ミク?」


でも、なんだかリアルに感じる。
調律が上手いとか、そういうんじゃなくて、根本的に現実味を帯びているその感じは。


「カイト君と、同じ?」


イヤホンを外して、安藤を見る。
きょとんとして、どうしたって言ってくれた。


だから、聞いたの。


「安藤の所のミク、実体化してる?」


焦った彼に教室の外につれられて、屋上へ向かう。


私の楽しい高校生活は幕を開けた。

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