ほっておけませんよ



「きゃーーーーっ」


派手な音が玄関の方で聞こえてきた。マンガ風に表現するなれば、『ドンガラガッシャン』


「マスター!ちょっ…何があったんですか、この状態」


大丈夫ですか、呆れつつ言いながらも、内心はひどく動揺していた。怪我がなければいいけど…


「あははは…ちょーっと転げちゃって」


「あははーって…また靴に足引っかけて傘に捕まった後、体支えきれなくて倒れちゃった。」


「ぅえっ」


「とまぁ、こんな感じですか?」


「よ、よくわかるねっカイト…」


ん〜…
照れた顔するのはいいけど、可愛いから。
もうすぐ時間じゃないかなぁ。

「怪我、無いですか」


「あっはい。無いですよ!」


「それはよかった。そろそろ電車でちゃいますよ」


苦笑いしながら言うと、ハッと目を見開き時計を確認するマスター。きっと、いや絶対忘れてたんだろうな。学校行くこと…

「わっ大変、カイト行ってきまーす!」


走っていく背中に手を振って、ドアを閉める。
さて、傘立てかけて、靴並べてー…


後ろを振り返って、また苦笑い。今日はずいぶん寝ぼけてたから、服が散乱している。
制服と普段着を間違える人っていったい何人いるんだろうか。


寝ぼけて普段着を着ようとしていたマスターに何回違うっていっても聞いてくれないんだから、あの人は。


まったく、大学生になってもあんなん、なんだからー…


…まぁ、可愛いんですけどね。


そういうところも。


「大好きですよ。美奈子」

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