心は、一致する
さて、目の前にお酒。
どうしようー…
そこから先の記憶がない。
二口か三口飲んだぐらいで頭がクランクランしてきたのは覚えてる。
頭痛いなぁ。二日酔いってしんどいんだなぁ。
瞼を開けるのも億劫になって、覚醒しているのにもぞもぞと布団に潜り込む。
今日は月曜日だけどナントカの日だから休みだってクラスの子が話してたのを思い出す。
寝坊しても良い日だ。
また眠りに落ちようとしたときに、何かに締め付けられた。
ついで、安心する温もりと、緊張する香りが無理やり脳を動かし始める。告げられた命令。
確認。ぱちっと目を開けるとー…
「あ…マスター。おはようございます。もうそろそろ起こそうかと思ってー…」
「かかかかカイト君!?なんで一緒に寝て…」
締め付けられたと思ったものはカイト君の腕だった。
ダメ!顔見せれないぐらい赤くなってるはずー…
「マスター。この際ですし、少しお話しても良いですか?」
「むっ無理…!離しー…」
そう言うと、カイト君がさらに私を強く胸の中にしまい込む。
「ひゃあっかかかかカイト君っ」
「こうでもしないと逃げちゃうんですから、我慢してください」
どうしよう…
吐息がかかる。どこにって、唇に。それぐらいに近い。
目覚めたばかりの私には刺激が強すぎる。
「聞くっ聞くから!もう少し離れて…っ!」
お願い…そう言うと、カイト君はそっと私を解放してくれた。しかし、腕は私を逃がさないようにがっちり固定されている。
「じゃあ話しますね」
「は…はい…」
にっこり笑って、私を見下ろす彼は…別人みたい…
カイト君って…こんな人だった…け…
「何を…話してくれるの?」
「まず、質問です。僕は、あなたの弟のままですか?」
「…え?」
弟ー…
そうだよ。だって今まで家族みたいに過ごしてきて、お姉ちゃんらしいことは出来なかったけど…私にとってあなたは大切なー…弟ー……?
「違う…」
違う。違うよ。
だって今カイト君から聞かれて浮かんできたのは…
「大切な…男の人…?」
はっとして。
顔が火を噴くぐらい熱くなった。
これ以上は、耐えられない…!
私は勢いよく起きあがろうとした。しかし、カイト君がそれを許してくれずに、また近い距離に戻った。
吐息の近づく距離。あり得ない距離。
「やっ!心臓壊れちゃう!」
「僕だって張り裂けそうですよ!」
胸に手を当てさせられて、目を見開く。だって、私と同じぐらいに…ううん。それ以上に脈打っている。
「マスター。もう僕あなたの弟は嫌です」
「僕はあなたの。美奈子の恋人になりたい」
「ーっ!!」
どうしよう。どうしよう。
突然でついていけない。混乱する。
そもそも、現実なの?
待って。聞かなくちゃ。
ずっとさけてきた理由の半分。
「私のこと、嫌いじゃない…?」
「なんでですか」
「だって最近。カイト君の瞳見れなかったし、突き飛ばすし、逃げちゃうし…一緒にいたらどうかなりそうだからなんて、言えなくて…この気持ち変かな?」
「私、おかしいのかな?カイト君私の事嫌いじゃない…?」
泣きそうになって、手で覆い隠す。
「…あなたは本当に」
「ー…」
「いつからそう思ったんですか?」
「…ずっと前から。でもはっきり意識し始めたのは夜にカイト君の部屋にお邪魔したとき」
「嬉しいです」
「おかしいのに…?」
「美奈子。その気持ちの名前。わかってるでしょう」
「ー…恋です」
恥ずかしくて認められなかったから…違う答えを探していたけど、駄目みたい。
「正解です」
私は、もうこの人に捕らわれた。
ぎゅっと抱きしめられて、また近くなる吐息。
「私、カイト君が…好きです。恋人にしてくれる…?」
「もちろん。喜んで」
ぱぁと喜ぶ私の横髪を梳きながら、カイト君は言った。
「“カイト君”は弟。僕はカイトですよ」
「……かい…と」
「はい。美奈子、好きです」
くらくらする言葉の次は、目の眩むキスが贈られた。
「……ん」
唇を離すと熱く熱を帯びるカイトの視線が絡む。
「僕、止めれる自信ないので、美奈子が止めてくださいね」
「えっ!?ちょっと……ぅ」
現在
午前11:26
ナントカの日は、甘い記念日になりました。
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