混乱は、収まらず



「あー…」


ピアノに顔を埋めながら、ぼやく。
昨日、カイト君の部屋でのことをまた思い出して、顔が…火照る。


あんな距離。昔なら何ともなかったはずなのに…


あんな…あんな近くに…
顔が迫ってきて、指が…


「あぁああ…」


胸が…締め付けられる。
こんな事、今まで無かったのに。おかしいのかな、私。


ううん。でも中学生ぐらいの時から、こういう感情は生まれてた。ただ、自分でも気づかないうちに胸の中にしまってただけ。


そんな、気がする。


「なんか、ネジが外れちゃったみたい…」


「…そのまんまなのかも」


そう。自分で上手いこと言ったと思った。
今までためてた気持ちが、ちょっとしたことで、はじけた。
そんな気分。


「変なの…」


安藤め。まさか私が困ることが分かっていたからあんな質問したんだろうか。



『カイトにも、してんのかよ』


してたよ。中学生までは…
高校入ってから、環境も変わって、大人の仲間入りした気分になって…あんまりカイト君にひっつかなくなって…


なんでだろう?
そう思った。だから、昨日確かめてみようと思って…勢いで行ってみたら。


意識して話せなくて、目がみれなくて…逃げちゃって…


昔は、中学生の時は、そんなことなかったのに…


そういえば、冬に海行ったこともあったなぁ。
早く帰ろうって急かすから、手を握って、もう少しって寒い潮風の中歩いたっけ…


熱も出して、カイト君に看病してもらったんだよね。
朦朧としてて覚えてないけど…


あの頃は、なにも考えずにいれたのに。
今は…頭の中グシャグシャで、考え事でぐるぐるで、普通になんて出来ない…


このままじゃ、駄目なのに…


その時、マナーモードの携帯が震える。


心ここにあらず。
ぼーっとしたまま、確認。
メールみたいで、内容がー…


《ついさっき決まったんだけどさぁ。こんどボカロ達会わしてやることになったんだ。一週間後の日曜日だけど…来るか?》


私は現実に戻ってきて、また旅立つ。


そういえば、他の子達に会わしてあげるって約束もしたな。


っー!


私は邪念を払うように、メールを打って、乱れるようにピアノを弾きだした。


《行くよ(^-^)

よろしくね》


あの時、私、抱きついちゃったんだったーーー!

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