snack make
はろはろ、リンです。
今日はマスターの帰りが早かったこともあって、レンとマスターと三人でお菓子づくりをしています。
昼下がりの午後、おやつを手作りなんてすてきっ
「ミカンは〜?マスター、私のミカン知らない?」
「リン、さっき食べたの忘れたのかな?」
ちょんと額を突かれて、よたっと後ろにたじろぐ。
「あ!…そうだった…」
今日はマスターの希望で、特製パフェを作成中。
一度で良いから、自分の好きなものだけを詰め込んだパフェをお腹いっぱい食べてみたい。
昨日、テレビを見ていたマスターがはにゃんとぼやいていたのを聞き逃さなかった、レンの聴力と行動力に感謝だ。
朝のうちに材料をすべて買ってきたレンは、仕事から帰ってきたマスターにまんまとドッキリを成功させた。
やったーと言って抱きついてきたあの喜びよう。
こっちも嬉しくさせてくれたのだから、やりがいもある。
『大好きっ』
その時のほんわかと可愛く笑うマスターに見とれていたら、レンも私と同じだったみたいで少しの間行動が停止していた。
このことは、弟のプライドに関わるので内緒にしておいてあげよう。
「あぁー、ミカン、アイスと一緒に食べたかったのに」
「それじゃあ、私のミカンちゃんをあげよう」
地団太を踏んでいた私に、マスターがはい、と小皿に山と盛られているミカンを差し出してくれた。
きょとんと目をしばたかした私は、一粒摘んで口に放り込んだ。一気に広がる甘酸っぱい、味と気持ち。
「リンいいの?良かったのに」
「十分!ありがとう、マスター」
「マスター、ミカンならいっぱいあるから、あげなくても良いいって」
マスターの後ろから聞こえてくるのは、ため息混じりのレンの声。
「あれ?そうだったけ」
とマスターが首をもたげる。
「こんなことも想定して、多く買ってきたんだ」
おぉっさすが私の弟!
「バナナも?」
首を傾げて聞くマスター。
きょとんとした丸い瞳が可愛いなぁ、なんて思っていた私を置いてけぼりにしてレンが淡々と言う。
「バナナは三人分しか買ってない」
「それじゃあ、はい。あーん」
マスターが自分の小皿からバナナのぶつ切りをつまんで、レンに差し出した。
「えっ」
「大好きなんでしょ?はい。一個あげるよ」
あーん。そういって口を開けさせようとするマスター。
たじたじなレンは、もうマスターしか見えていないようだった。
「あ…あーん」
もぐもぐとぎこちなく口を動かすレンと、ほんわり幸せそうなマスター。
「ずるいっレンだけずるいーっ」
なんだか二人だけの空気になっていたのが悔しくて、鼻息荒くレンの前ににじり出る
「リンも、はいあーん」
「あーんっー…ぅむーおいふぃ」
マスターから食べさせてもらったミカンは特別おいしくて、手をパタパタさせて喜んでることをアピール。
マスターはきゅうと口を引き結んで私を抱きしめてくれた。
「可愛いコ!」
「ーちょ…俺は?」
小声で小さく愚痴をこぼしたのを私は聞き逃さなかった。
ふふん。マスターの事独り占めするから悪いのよっ
でも、そこは私たちのマスター。レンの珍しい甘えた言葉はちゃんと届いていたらしい。
「レンはいいコ!」
「…」
抱きしめられたため横にきたレンは言ったことを後悔したような、照れているようなよくわからない顔をしていた。
さらに言うとマスターの胸に顔を埋めているせいで、体はかちこちだ。
「私の家族は可愛いし良い子だし、最高だねっ」
「マスターは可愛いし良い子だし、綺麗だし天然だし抜けてるし、ほわほわしてるし最高だよっ」
「それ…誉めてんの?」
「誉めてんの!ほめほめっ」
だって、いつだって優しいマスターは私のあこがれなんだもんっ
「うんっうれしいよぉリンもレンも大好きっ」
「…マスター、アイス溶けちゃうから作業もどろ」
そろそろ平静を保つのが難しくなったのか、レンが身をよじってマスターの腕から抜け出た。
「あっうん。そだね。パフェ作っちゃうぞー」
「おーっ」
私とレンの頭を一なですると、マスターは作業に戻るべく体をはなしてテーブルへ向き直った。
ふんふーんと鼻歌を奏でながら、長い髪をふわりとなびかせるマスター。
を真横から見つめる私達。
((綺麗だなぁ…))
2人して、瞳に移っているのはきらきらと輝いている彼女。
可憐に、美しく。
そんな笑顔にさせているのは自分たちとは知らず、ただ魅とれていた。
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