少し寝苦しいと思って寝返ろうとしたら、何かに固定されてるみたいに体が動かなくて、うっすらと目を開けた。


「…か、むい?」


そしたら目の前が桃色一色。あたしの大好きな色であって、見慣れたその色は神威の頭。
いつの間にベッドに入ってきたのか、神威はあたしの腰にしっかりと腕を回してスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。


「神威…」


返事はない。
もうそろそろ起きなくちゃいけない時間かもしれないけど、体が動かせないから時計も見れない。神威と布団の温かさに負けて、またウトウトしかけた時、


「…名前」


そう囁かれて、ギュッと抱き寄せられた。
ドキッとしたけど神威が起きた様子はなく、目の前に整った彼の顔が急接近。


「…可愛いなぁ」


女のあたしより可愛いその顔を見つめて、自然と顔がゆるむ。
彼氏であるはずの神威の方が彼女のあたしより可愛いって何だか少し微妙だけど、神威は強さも持っていて、あたしはそんな神威が大好き。ただ、そんな彼とあたしが釣り合ってるかが時々心配になったりして。


「…」


無言で神威の顔を見つめて、そっと接近した。
唇と唇が合わさりそうになったところで止める。

うーん…寝てるとはいえ、やっぱり恥ずかしい…


コツ…


ということで、おでことおでこをこっつんこ。
あたしの心は満たされて、


「大好きだよ…」


なんて言ってみたり。あたしは一人でニヤけて、温もりに埋もれながら再び目を閉じた。そのすぐ後、


「あーあ、もう限界…」

「…え」


チュッとリップ音と共に唇に温かい感触。
目を開けたら、うっすらと目を開いた神威の顔がアップにあって、恥ずかしいのと驚きで目を閉じた。
やわやわと唇の感触を楽しむような優しいキスは、とろけるような愛しさを生む。
神威が唇を解放した後、あたしは顔に溜まる熱を感じながら目を開けた。


「…起きてたの?」

「うん」


神威は可愛らしい笑顔で頷いた。
ドキドキと高鳴る胸を押えて、


「いつから?」


と聞いたら、神威はケタケタ笑って言う。


「名前、男は可愛いって言われてもあんま嬉しくないんだよ」


ああ、けっこう最初の方じゃないか…。

あたしはもっと恥ずかしくなって布団に潜った。


「隠れなーいの」


神威はそう言うと、同じように布団に潜ってあたしのあごをクイッと持ち上げて視線を絡ます。


「うん、名前の方が可愛いよ」

「…嘘ばっか」


そう言ったら、神威は首を傾げて言った。


「なに?俺の彼女に文句つける気?」

「…ありがと」

「どーいたしまして」

「神威も…」

「ん?」

「神威は可愛いけどカッコいいね」


そう言ったらケタケタ笑う。可愛いは余計だよと言って、あたしを抱く力を強めた。


「可愛いのは名前だけで十分だからね」

「うーん…そうかなぁ」

「そうだよ」

「でもやっぱり神威も…」

「名前」


神威がニヤリと笑う。


「襲っちゃうぞ」


え…


「可愛いなんて言えないようにしてあげよっか?」

「遠慮しときます…」


もう可愛いって言うのやめよ…。心に誓う。なんか神威怖いもの…。
ニコニコとしている彼から妙な威圧感を感じる。


「んー」

「?」

「うん」

「なに?」

「やっぱり襲っちゃお」

「ええ!!」


あたしは急いでベッドから出ようとしたけど、神威に再び布団の中に引きずりこまれる。
なんで!!!?ゴメン神威もう言わないから!!と言ったけど神威はケタケタ笑って放そうとしない。


「ちょっまっ…無理!」

「何で?」

「何でって…」


だって、は、初めてだもの!なんて言えず、


「は、恥ずかしいし…」

「最初だけだよ」

「無理」

「俺たち付き合ってるのに?」

「うっ…心の準備が…」

「じゃあ名前の準備が出来るまで待ってるよ」


なんて言って、あたしが逃げないようにしっかりと抱き寄せる神威。
心拍数がどんどん上がって、心臓が壊れそう…。ってか、朝っぱらから何しようとしてんのよ。


「神威…」


あたしは自分を落ち着けながら、出来るだけ声が震えないようにして言う。


「なに?」

「本当にまだ無理なの」

「ん?」

「もう少し、心の準備する時間くれないかな…?」

「…」

「あたし、初めてだから…」


そう言ったら抱きしめる力が弱くなって、神威はあたしの顔を覗き込んだ。


「やっぱり名前は可愛いよ」

「…っ」

「よしよし」


なんて言って、頭を撫でられる。気持ちよくて目を閉じた。


「神威」

「ん?」

「一番好きだよ」

「うん、知ってる」

「そっか」


優しくて、強くて、可愛いくて、そんな貴方が大好き。
だから、こんなあたしだけど見捨てずに気長に待ってて。神威になら全部あげていいって本気で思っているから。
















オオカミにならずにはいられない
あんま可愛いこと言わない方がいいよ











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槇様へ
1000ヒット企画参加ありがとうございました(^^)
ラブラブカップルな二人というリクエストを頂いたのですがいかがでしょう?
付き合ってまだ日の浅い二人ですvV神威さんはヒロインを溺愛してます(笑)

こんなグデグデな神威さんでもいいですかね?
これでもよろしいなら受け取ってやって下さいな♪
リクエストありがとうございました!

20090220白椿