※獣耳ネタです。そして若干お下品です。大丈夫な方のみどうぞ。










「雛ー」


それは気怠い朝の目覚め。


「雛起きてったらー」


うっすら目を開けたら、ぼやける視界にピンクが揺れる。


「…ウサギさん?」

「うんそう」


だんだんクリアになる視界に映りこんだのは、


「…は?」


真っ白い長い耳。思わず飛び起きた。


「神威団長!?なんですかソレ!!」

「俺はウサギだった」


神威団長の頭に、可愛らしいフワフワのウサギの耳がはえていた。


「か、かわええ」


なんか、神威団長似合う。桃色とウサ耳似合う!!さすが夜兎なだけある!とか意味不明な思考回路は寝起きだからだ。それにしてもすごく似合っていて思わず抱き付きたくなる衝動を押さえ込む。ウサギさんだけれど神威団長なのは間違いない。そう思えば恥ずかしさが上回る。似合うけれどもなぜにウサ耳なんだろう?


「ほら、雛も選びなよ」


まだ訳の分からない状況で、神威団長に差し出されたのは様々な色のキャンディーが入ったガラスのビン。


「これ食べれば雛にもはえてくるよ」


楽しそうに笑う。いや別にはえてほしくないけど。てかそれ


「直にはえてるんですか!?」

「ほら早く食べてみなよ」


触ってみたくて手を伸ばすけれど、グイグイとビンを押し付けてくるので、とりあえず一つ摘み出してみた。ビー玉くらいの大きさのオレンジ色のキャンディー。


「ほら、食べて」

「…」


しかしそう簡単に食べられるものではない。だって他の動物の耳がはえてくるのだ。どんな感じなのか少し怖いじゃないか。しぶっていたら団長は笑顔で言う。


「阿伏兎が任務先から買ってきたんだよ」


阿伏兎さんのお土産か…。だったら、少しは安心かな…。意を決して。


パクッ


「…おいひ」


甘い。普通のキャンディーだ。と思ったのも束の間。頭がムズムズし始める。ムズムズを鎮めようと頭に手をやったらフワリと柔らかい感触。


「あ、オオカミ」

「…」


本当にはえてきたらしい。確かに頭に何かある。


「コレここの子どもたちのおもちゃなんだってさ、面白いネ」


急いで洗面所の鏡を覗き込むと、


「…おー」


確かにオオカミみたいな耳が頭ついていた。ピクピク動かすことも出来る。


「すごー」

「あ、雛尻尾もフサフサ〜」


どうやら尻尾もはえているらしい。
聞こえた瞬間、神威団長がその尻尾をギュッと掴んだため、


「んひゃぅっ!!!」


今まで出したことないような変な声が出て急いで口を押さえた。うわわっ!なんかゾクゾクする。神威団長がそのまま尻尾を掴んで離さないため思わずその手を掴んだ。団長が不思議そうに首を傾げて言う。


「どうしたの?」

「は、なして下さい」

「…なんで?」


なんでって…、こっちこそなんで?


ニコニコ可愛らしくこちらを見ていたが、何か閃いたみたいに瞳を開く。深い碧い色の瞳が鈍く光った。


「だっ団長…?」

「…」


怪しい微笑みとはこのことを言うのだろう。尻尾は相変わらず握られたまま。握る手に力が加わる。


「…っ…離して下さいって」

「だからなんで?」

「なんか、…イヤ」


ゾクゾクする。背中がゾクゾクする。気持ち悪い。そんなあたしを見て、団長はさらにニヤリとして言った。


「もしかして感じた?」

「なっ!!」


言った瞬間、尻尾を掴む手が尻尾の先っちょに向かってスルリと動いたために、


「ひゃんっ!」


ゾワゾワ鳥肌が立つ。


「ダメだよ雛、そんな声出したら…誘ってんの?」

「な、何言ってんですか!!」


団長がいつもと違う!いつもよりSだ!なんだコレ。頭からは白くて可愛いウサギの耳なのに、目はまるでハンターのそれだ。なんか、笑い方が妖艶だ…。これはもしや貞操の危機…!?まだ起きたばっかなのに!朝なのに!!


「ねぇ雛」

「は、はい…?」


若干近付いてくる。思わず後ずさる。冷や汗が伝う。が、すぐに洗面台が背中に当たって追い込まれた。団長が背後の鏡に手をつく。


「兎ってね、すっごい性欲強いんだって」

「へ、へぇー」

「なんかさ…」

「…なんですか…?」

「今すっごいシたい気分…」

「…そですか」


間違いない!!このままじゃ食われる!!どうしよ…!!





─────*





最初はそんなつもりじゃなかったんだけど、だんだん変な気分になってきた。不安そうに見上げる揺れる瞳も、俺の一つ一つの動作にピクンと反応するオオカミの耳も、全部全部そそる。オオカミっていうより子犬だ。おまけにあんな声出されたらスイッチ入って当たり前でしょ。


「…か、神威だんちょ…?」

「んー?」


さぁどうしてくれようか…?確か雛って経験無かったはずだ。あったら面白くないけど、初めてにして獣耳…。いきなりアブノーマルなのもどうだろう…。そうか…あのキャンディー実は大人のおもちゃだったんだね。今気付いたよ。阿伏兎グッジョブ。


「ベッド行こっか」

「…っやだっ!!」


返事は無視。すぐに捕獲して目的地へ。そういえばどうして今まで手を出さずにいられたんだろ?すごいな俺。と自分で自分を褒める。大した忍耐力だよネ。


「やだやだっ!!離して!!」


ベッドに押さえ付けると雛の顔も焦りを増す。抵抗されると余計に燃えるなぁ、どこで学んだか知らないけど、煽り方上手だね雛。


「雛…」

「離してっ…」


ベッドに押さえ付けられて、身動きとれないまま真っ赤になって必至で言う。あはっ、可愛い。


「離し、てっ!!」

「いーや」


据膳食わぬは男の恥だよ。離せるわけないじゃない。今にも泣き出しそうな顔、もっと歪ませてみたくなる。

そんな暴走寸前の感情は、


ガチャリッ


「…あー、コレはどっち?」


空気読めない阿伏兎によって鎮火されることになる。

阿伏兎は部屋に入るなり頭をポリポリしながら言った。


「どっちって何が?」

「合意の上?無理矢理?」


その質問に、


「無理矢理ー!!!」


雛が叫ぶ。


「阿伏兎さん!助けて!!」


あ、この状況で阿伏兎の名前呼んじゃうんだ?知らないよ、手加減してあげないよ!


カプッ!


「ひぃっ!!」


うなじに噛み付く。すると、


「っあ、あたしだって!!」


ガブリッ!!


「わっ!!」


雛が噛み付き返してきた。それがまた半端なく痛くて驚く。どうやら牙もはえていたらしい。雛なんかの噛み付きで怪我を負うはずないのにこの痛さ。絶対牙だ!おまけに彼女は本気で噛み付いてきたようで、その牙はブスリと肉に突き刺さる。


「本気で噛み付くもんじゃないよ雛」


さっき手加減しないって心に誓ったけれども、噛み付きはそれなりに手加減したよ俺!


「なぁ団長…」

「なに阿伏兎、出てってくれない?」

「もしかしなくても、この状況はあのキャンディーのせいですかね?」

「…」


確かにオオカミの耳はキャンディーのせい。そそられたのもキャンディーの効果によるものかもしれない。


「そうかもね、だったら何?」

「ほれ」


阿伏兎が口の中に何か入れた。


「…ん?」


甘い…。美味しい…。


それはあのキャンディーの効果を打ち消すもので、


「…んー?」


だんだん高ぶっていた感情が引いていくのが分かる。理性が戻ってくる。


「…」


半泣きの雛を見たら何か酷いことした気がしてベッドから下りた。雛はすぐに起き上がってベッドの隅に逃げて行く。何て声かけよう…?黙ってキャンディーを口の中で転がした。


「ウサギって性欲半端ねぇらしいぜ…だから許せ雛…な」

「…」

「俺の土産のせいで悪かったな」


阿伏兎の渾身のフォローに、雛が頷くのを黙って見つめる。俺も謝らなきゃと思ったけれど、何となく素直に謝れなくてじっと雛を見つめた。あんなに嫌がらなくてもいいんじゃないかなぁって…ちょっと思う。女心は難しいネ。まぁ雛は爆裂的な初っ子でもって恥ずかしがり屋さんだから仕方ないのかもしれない。今回は俺が悪いな…。雛はそのままいい子に阿伏兎からキャンディーをもらっている。雛の頭にはまだ耳がついていて、なんだか阿伏兎のイヌみたいだと思った自分を嫌悪した。








獣耳マジック

ウサギに襲われたオオカミ










実は目標が100000打だった
前にブログでも書いた獣耳ネタ。楽しかった(笑)
20090812白椿


[*前] | [次#]