久しぶりに大規模な戦場を駆け抜けた。強いヤツはいなかった。だけど、久しぶりだったからちょっとのめり込んで、気付けば14日間。殺し続けた。染まり続けた。服は赤に染まって、やがて黒ずんでいく。肌についた血は乾いてカピカピになって剥れていく。血のむせ返るような匂いと飛び交う声にゾクゾクが止まらない。
そうして戦場に標的がいなくなった時、まだ血が騒ぐのを感じながらも、微かな疲労も覚え、団員たちと共に船に帰還。


「…風呂入らなきゃ」


我ながらおぞましい姿だ。地球産の雛には見せられないなぁとぼんやり思いながらシャワーを浴びる。汚れた服は捨てて、綺麗な服を引っ張り出した。


「…ちょっと寝ようか」


こういう血に流された戦いをしてきた後、決まって雛は2〜3日俺に近寄らない。それは、戦場を渡るために必要な殺気や鋭いオーラが、俺から抜けきらないからだと思う。前に戦場から帰った時、雛は少なからず少し怯えていた。だから俺もこういう時に無理に近寄ったりはしない。


「…はぁ」


ベッドに倒れ込むと眠気が襲ってきた。当たり前だ、14日間も戦い通したのだから。少し寝ようと瞼を閉じた時、遠くで足音が…


「…」


その足音は俺の部屋の扉の前でストップする。


コンコンコン


控え目なノックの音。無視しようと思ったのだが、


ガチャッ…


「…神威、団長…」


見たら、雛が少し開けた扉の隙間から覗いていて、


「…雛?」

「…疲れてますか?」


少し驚いた。雛が戦場の後に来るのは珍しいから、


「いいよ、入って」


起き上がってベッドに腰掛けると、雛は少しこちらを窺ってから、


「お邪魔します」


そう言って扉を閉める。


「どうしたの?珍しいね」


考えてみたら、雛から俺の部屋に来ること自体が珍しいかもしれない。


「…」


雛は無言で俺の隣に座る。今まで鋭い殺気だらけの戦場にいただけに、隣の無防備な空気に少し違和感を覚えた。


「何かあった?」


そう問えば首を横に振る。


「じゃあどうしたの?」


今度は沈黙。少し俯いて暫くしてから言ったのは、


「…だって、」

「だって?」

「…だって二週間も…帰らな…」


最後の方はゴニョゴニョと言葉は小さくなって聞き取れない。だけど、

"だって、二週間も帰らなかったんだもん…"


そう聞こえた気がした俺は、


「なに?かまってほしいの?」


からかいまじりに言ったら、


コクン


ちょっと赤くなりながら頷いたので面食らう。何て言うか、反応が直球すぎてどう対応すればいいか一瞬混乱した。今まで殺しをしてた俺だもの。こういう空気に反応が遅れる。


「…疲れてますか?」


雛は問う。


「…」


返事が出来ない俺。

あれ…?
なんだろうこの感じ。なんか…変。むず痒い。うわっ、なんだっけコレ。


「あ」

「…え?」

「可愛い」


愛しい可愛い好き抱き締めたい…そういう感情が戻ってきた。心に温度が戻ってくる。溢れ出す。


「うわっ」


だから君を抱き締めた。抱き締めた瞬間ふと思うのは、ちゃんと血は落とせただろうか…?匂いは落ちただろうか?雛が汚れないだろうか?だって俺はこんなにも汚れていて、しかし、


「…かまって」


そんな言葉が聞こえては、小さな問題に悩んではいられない。君を抱き締めると、自分まで綺麗な存在になったような気がする。汚れを知らない君が、俺の傍にいてくれることが不思議で、


「もう嫌ってなるくらい、かまいたおしてあげるよ」


覚悟して。誘ったのは君だよ。何して遊ぼうね?






ねぇ遊ぼうよ

キャッチ&キスって知ってる?
外国の鬼ごっこなんだけどやらない?


平和な戯れ合いを愛しく思うよ










100000だよー
キャッチ&キスはオーストラリアの鬼ごっこ。タッチの代わりにキスで鬼を交代するんだってさ^^
20090807白椿



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