ああ、懐かしい夢を見た…
温かい布団の中で一つ寝返りをする。
彼女は今、何をしているのだろう…
俺はこの惑星を出る、と言ったら彼女は、ふーんと興味なさげに言った。
「寂しい?」
「ううん、確かに神威にはこの惑星は狭いかもね」
「そう思う?」
「うん」
雨が降っていて、夜兎二人、それぞれ傘をさしていた。
彼女のは確か紅色。その色がひどく似合っていたのを覚えている。
「でも、お母さんや神楽ちゃんはどうするの?」
「さあ?どうするんだろうね」
「ひどい野郎だね」
「あはは」
正直家族はどうでもよかった。強くないヤツらだからね。でも、彼女のことは引っ掛かっていた。
「ねぇ、一緒に行かない?」
「んー?」
「俺と一緒に宇宙に出てみない?」
「んー…」
彼女は少し首を傾げて、却下と言った。
「そっか」
「うん、面倒くさい」
「ふーん」
まぁ、断られるだろうと思っていたから特にショックは受けない。ただ、残念に思った。
「もったいないね」
「何が?」
「強いのに、こんな所にとどまるなんて」
「…きっとそのうち、神威の方が強くなる」
「そうだといいね」
「なるよ、だって神威は男だもん」
男と女。確かにその違いはあったけど、当時は彼女の方が強かった。スピードも戦闘のセンスも彼女の方が上。ただ力だけは互角だったと思う。
「いつ行くの?」
「早いうちに」
「そう」
「寂しい?」
「寂しくないって言ったでしょ」
「そう?」
「…帰ってくる?」
「さあね」
「そっか」
「なに?やっぱり寂しいの?」
「…神威がいてくれて楽しかったよ」
「うん、俺も○○がいてくれて楽しかった」
あれ…?
そういえば、彼女の名前なんだっけ?
ぼんやりと布団に潜って考える。でも思い出せない。
それでも克明に覚えていることが一つある。
俺は彼女が好きだった
容姿とか性格とか名前じゃなくて、その強さと真直ぐな瞳が。
きっと彼女との間になら強い子どもが生まれるんだろうに…。
ウトウトと布団の温もりに浸りながら、もう一度彼女の夢を見たいと思う。
夢の中で彼女は昔の姿のまま俺に言った。
「昔はよく名前呼んでくれたのにね」
だから俺も言い返す。
「あの時、あんたなら俺を止めれたかもしれないのにね」
今は昔
20090209白椿
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