なんでだろ…?


「あんた誰だっけ?」


団長と目が合うと、


「あっ…あたしは…」


「何でさっきから俺のこと見てるの?」


「…!!!」


もう恥ずかしくて恥ずかしくて、


「あり?行っちゃった」


思わず逃げてしまいます。
前はこんなこと無かったのに…。
そのまま走って走って、ずーっと走って立ち止まると、心臓の音がバックンバックンとうるさいことこの上ない。
てか、またあんた誰?って言われたなぁ…。なかなか覚えてもらえないんだなーこれが。と思ったけど、考えてみたら、訊かれるたび、名乗る前に逃げていた気がしないでもない。
そっか…実はまだ名前名乗ってないのか…
情けなくなって溜め息が出た。何やってんだろ…あたしは。


「なーに溜め息ついてんの?」


「ひゃっ!!!」


いつの間にか団長が隣に立っていた。
音も気配もなくてさすが団長だ!!!とか思っている余裕はなくて、


「な、なななどなどどど」


などとどもってしまったり。


「落ち着いて」


「どどどーしてここに…」


「あんたが逃げるからさぁ、気になって追いかけてきちゃった」


団長は笑顔のまま大丈夫?と言う。


「なんか顔赤くない?」


「え?」


「熱?」


そう言って近付いてきた団長の手を、あたしは奇声と共に叩き落とした。


「どしたの?」


「あ、そ、すみません!!体が勝手に…」


「ひどいなぁ、せっかく心配してあげてるのに」


そう言ってまた手を伸ばす団長。
あたしは何かもう顔が熱くて熱くて、これもう本当に熱じゃね?と思いながらも、そんなこと考えている場合ではないくらいに心臓がうるさい。早く、早く伸びてくる団長の手から逃れないと、そう、なんか顔が爆発する気がした。


「団長!!!」

「なに?」


団長の手が止まって、少し安心する。


「非常に申し上げにくいのですが…」


「うん」


「あの…あたしその…」


「早く言わないと殺すよ」


殺されるのは嫌だ!!だから大声で言う。


「神威団長恐怖症かもしれませんっ!!!!!」


「なにそれ?」


「…あたしにも…分かりません」


だって本当につい最近なのだ。団長を見つけると、すっごく見つめたいけど逃げたいような、体が熱にうかされたみたいな感じがして、苦しくなる。


「だ、団長を見ると心臓が痛くなるんです!!」


「…ふーん」


「体全体が拒否してるみたいな…」


「ふーん」


「だから、非常に申し訳ないですが…あまり近付いてこないで下さい…」


ヤバい!顔の前に心臓が爆発しそうだ。
だけど団長は笑顔で首を傾げて言う。


「そんな顔で言われてもね…」


え?
どんな顔?
ま、まさか不細工だからお願い聞いてくれないとか!!?今すぐ死ねみたいなそんなノリですか!!!


「真っ赤だよ」


団長はケタケタ笑った。


「…そうですか?」


「うん」


「やっぱり熱ですかね?」


「ん?」


「あたし、ちょっと休んできます」


「あり?ちょっと違うんじゃない?」


何が?
もう一度団長を見ると楽しそうにこっちを見ていたので、慌てて目をそらした。


「あんた気付いてないみたいだから教えてあげよっか?」

「?」


「あんたさ、俺のこと好きなんじゃない?」


「は?」




十中八九、そのとおり
でも気付いてない





「要するに俺とヤりたいってことでしょ?」


「いやいやいやいやどう考えたらそうなるんですか!!?」


「普通に考えてそうでしょ?」


「好きなら逃げたくなんてなりませんよ!!」












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企画『小春日和のお茶会』様提出
20080208白椿



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