「なまえつーかまえた!!」

「ぐはぁっ!!」


いきなり後ろから抱き付かれた。神威団長が笑顔であたしの顔を覗き込む。


「だ、…団長…!!」

「んー?」

「ぐる…じい…」


抱き付く力が半端ない。夜兎は宇宙一の戦闘種族だもの。あたしみたいなマイナーな種族には、ちょっとハードなスキンシップだ。


「な、内臓的な…もの、がぁ…!!」


団長はケタケタ笑ってあたしを解放した。


「…しょーがないなぁ」


しょーがないもくそもない。骨ボッキボキいってたもの!!内臓口から出せそうだったもの!!!団長とは違って繊細な体してんだあたしは!!!
と言いたかったが、上司なので黙っておいた。


「なまえはすぐ苦しがるネ」

「げほっげほっ…」


よしよしと頭を撫でられる。慰めるんなら最初からやらないでくれ。このままじゃ、いつか殺されそうだ。


「もっと鍛えなきゃダメだよ」

「…努力します」

「もっと強くなってネ」

「…はい」


いや正直団長ほど強くなれるとは思ってませんよ。それにあの強さは尊敬を通り越して恐怖を感じますからね。


「なまえはまだ綺麗すぎるからね」

「…?」

「もっと血を浴びてもらわなくちゃ」


おいおい…なんか物騒な発言飛び出したよ。いいよそんな血浴びたくないです。


「今それ嫌だとか思ったでしょ?」

「…!!」


なんだこれエスパーか??
あたしが首をぶんぶん振ると、団長は嘘はいけないよと笑った。


「す、すみません…」

「いいよ。でも、これからはもっと血を浴びるようにね」

「…なんでですか?」


そう訊いたら、団長は可愛らしく首を傾げて言った。


「もっと汚れてほしいから」

「…あたし、汚れるのあんま好きじゃないです…」


団長はまた笑った。


「だけどこっちとしてはなまえに汚れてもらわないと困るよ」


あたしが怪訝そうに首を傾げると、


「だって、同じトコロに立てないだろ?」





君は綺麗すぎて

俺は本気で抱くことが出来ないよ





「かと言って殺しちゃうのも嫌だから厄介だね」

「意味が分かりません」

「そう?」


赤い兎と白い兎










20090208白椿



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