どんなに頑張っても、あの人に追いつくことは出来ないだろうと思っていたけれど、本当にそうだった。春雨に入団して早三年。まだまだ新人に分類されるのだろうか?それでももういろいろなことを任されるようになって、一人で任務をこなすことだってある。だけど団長にはまだまだほど遠いのだ。
きっと一生あの人に追いつくことはないのだろうなぁ。

「そんなことないんじゃない?」

団長はそう言うけれど、きっとあたしに追い越されるつもりもないんだろう。だって顔はいつでも余裕のニコニコ。少し見下した感じで見つめてくる。見下されるのは好きじゃないけど、力の差は圧倒的なので見下されてもしょうがないと思って何も言わない。あたしだって強くなりたい。だけど無理だ。

「なんでそう思うのさ?」

それはまず性別の違いという大きな難関から始まって、団長の類稀なる才能に終わります。すべてにおいて勝る要素が見つかりません。天才的な貴方の戦闘に惚れこむ人たちは決して少なくない。

「ふーん」

そうして団長は言った。そうやって思ってるうちは俺に追いつけないよと。じゃあどう思っていれば追いつけるというのだろう。きっとどう思っていたって貴方には追いつけないし、追いつかれるつもりもないのでしょうに。ニコニコ笑う団長を眺めて溜息を一つ。

「まぁ、なまえは別に強くなくっていいさ」

それは聞き捨てならないぞ。あたしの目標と対極の位置にあるお言葉です。だけど特に言い返す気力もないので、適当に首を傾げておいた。強くなくていいなんてそんなこと絶対ないと思うけどね。

「弱くていいよ、だってもし強くなっちゃったら俺殺したくなっちゃうもん」

それは本望ですね。だって、今のあたしは弱すぎて団長に相手にすらしてもらえないのですよ。それに比べたら殺してもらえるなんてなんて幸せなこと!!殺せばいいじゃない。殺してしまえばいいじゃない。よし、今日からあたしの目標は貴方に殺されることに決定。

「それじゃやっぱり、いつまでたっても俺には追いつけないでしょ」

まぁそうですけどね。相手にしてもらえない今よりは随分ましだと思う。もっと強くなりたいなぁ。団長みたいに強くなりたいなぁ。そんで殺されたいなぁ。戦って死にたいなぁ。

「ねぇ、俺に殺される前に俺の女になってみる気はない?」

はい?

「俺はなまえを殺したくないの、その意味分かるでしょ?」





ダーリン、予想外すぎるぜ

貴方にはいつまでたっても敵いません










20090323白椿



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