「ねぇねぇ、どうして俺たち別れたんだっけ?」

「んー、忘れた」


面倒くさいからそう言った。
一年前に別れてから、ずーっと会ってなかった神威。もう忘れかけていた今日この頃…、再会は突然だった。


「神威はまだ団長やってんのね」

「まあね」

「どうしてここに?」

「ビジネスだってさ」

「へー」


付き合っていたのは前に春雨がここに停泊していた時。出会ってから春雨がここを発つまでの一ヶ月ほどの短い間だった。


「なまえは?」

「何が?」

「最近どうなの?」

「まぁそれなりに」

「彼氏は?」

「いるに決まってるでしょ」


神威はケタケタ笑った。

こいつにとってはお遊びだったんだろうなと今では思う。
それは面食いだったあたしにも非があるから、特に怒りを感じたりはないのだが。


「どんな奴?」

「関係ないでしょ?」

「えー」

「神威は?」

「ん?」

「彼女は?」

「今募集中だよ」

「ふーん」


相変わらずチャラチャラした物言い。一年前と何も変わっていない。


「ねぇなまえ」

「なに?」

「その彼氏のこと愛してる?」

「…まぁそれなりに」

「ふーん」


神威に比べたらよっぽど誠実で素敵な人だわ。それにカッコいいしね。
彼氏自慢でもしてやろうと思ったけど、


「ねぇ、また俺の彼女にならない?」


その言葉に口をつむる。
何を馬鹿げたことを。


「あたしの話聞いてなかった?あたし彼氏いんのよ」


神威はまるで聞こえてないかのように話を続ける。


「この一年いろんな女と出会ったけどさ、やっぱりなまえが一番だと思ったんだよねー」

「お断りだわ」


いったいその口で何人の女に愛を囁いたんだろう。そんなセリフ信じるわけないでしょ。
また発つ時に別れるって言うに決まってるわ。終わりの見える恋なんて願い下げ。

あたしは半ば呆れて溜め息を吐いた。


「あたしこれから彼と約束があるの、バイバイ、お仕事頑張ってね」


そう言って、神威に背を向ける。
なんか不快な再会だった。きっとしばらくこの不快感は消えないだろう。
もう最悪だ…。


「ねえ」


だけど神威はあたしを引き止めた。うんざりしながらも、振り向く。
そこにはニコニコした相変わらずな彼がいて、


「しばらくここにいるからさ、また会いにきてよ」


あたしは手を振る神威に背を向けた。

何を期待してんだか…。






エリザベスの憂鬱










さて、今の彼氏は誰でしょう?
20090306白椿



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