あたしは泣きそうだった。
どうして?


「どうして殺してくれないの?」

「さあね」


戦場では、あんなにも簡単に命を奪う神威。なのにあたしは殺してはくれないんだって。


「当たり前だろー」

「だって、だってあたしはもう生きていけないよ。こんな絶望を背負って生きていけないよ。」

「知らないよそんなこと…」


神威のせいなのに…。


笑う彼。


「あっはは」

「神威のせいなのに!!」

「そうだねー」


あたしは拳をギュッと握った。


「お願いだから、殺して…あたし悲しすぎて、どうにかなってしまいそう…」

「そう?」


神威はケタケタ笑う。


「殺してよ」

「嫌だね」

「殺してよ!!」

「しつこいなー」


だって、自殺なんて怖くて出来ない。神威なら苦しまずに殺してくれそうなんだもの…。


「お願い…」

「だから嫌だって」


あたしは悲しくて悲しくて、ついに叫ぶ。


「だったら、…だったらあたしの彼を返してよおぉおおっ!!!」


血に塗れた神威は笑顔で言う。


「無茶言わないでよ、もう殺しちゃったんだ」


どうしてよ…!
どうしてなのよ!!


「大っ嫌い…」

「ん?」

「あんたなんか!大っ嫌いだああああ!!」


言ったら神威に素早く口を手で塞がれた。


「はずれー、俺が欲しいのはそんな言葉じゃありませーん」


そして耳元で囁く。


「ねぇ、俺の女になりなよ」

これを断ったら、殺してくれるかな…と思っても、


「言っとくけど拒否権無いから」


すぐにまた絶望で…、


「何のためにアイツを殺したと思ってるのさ」








不条理な愛の形










20090306白椿



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