「雛ー雛ー」
「なに?」
雛がだんだん敬語を使わなくなってきた。ようやく恋人っぽい感じ?でもそのおかげでキス出来なくなってきた。欲求不満…うーん難しいね恋愛って。
「これ巻いて」
「包帯?」
「うん、これを俺の頭と顔に巻いて」
「怪我したの!?」
「ははっ違うよ、地球は日差しが強いからさ、傘だけじゃ心許無いんだ」
「なるほど」
「はい、お願い」
「いいよ」
少しギクシャクした感じで俺の頭に包帯をあてがう。当たり前か、包帯巻くのなんて慣れてないもんね。それでも何とか包帯を巻こうとしてくれている雛を見守る。
「おーい雛ー」
「なに?」
「これだと俺なんも見えないよ」
「うわ!本当だ!」
視界が真っ白な包帯に遮られて真っ黒だ。雛はいけないいけないと呟きながら包帯を外す。しばらくして再び開かれた視界に雛のアップが飛び込んできて、うわー、なんかドキドキ…。どうやって巻けばいいんだ?と独り言言いながら、雛はその距離のまま試行錯誤。うん、無防備だ。ちょっとでも俺が迫ると顔真っ赤にするくせに、こういう時は鈍感なんだから。
「よし、こんな感じかな」
上手い具合に視界を残しながら、再び包帯を巻き始める。
ふがっ…
おいおい
「ちょっ雛ー、ふがが」
「え?」
「息!これじゃ窒息!」
「うわ!本当だ!」
再び包帯が取り払われる。地球産に比べたら多少息しなくても平気だけど、さすがに鼻の穴シャットアウトはキツい。雛はまたいけないと呟いて試行錯誤。
可愛いなぁ…
俺気持ち悪。ちょっと前の俺には考えられないこの状況。なにコレ。どうしよ。弱くなったのかなぁやっぱ。これじゃ鳳仙の旦那には到底敵わないかもなぁ。
「どうかな、こんな感じで」
「おお、意外といい」
鏡を見たらそれなりに様になっていた。雛さすがだなぁと思って見ると、雛も俺をジーッと見つめて、
「カッコいい」
そう言った。
「ん?」
「カッコいいなぁソレ」
「包帯が?」
「うん、あたしもやりたい」
「やったげよっか?」
「ホント!?」
可愛いなぁ…
俺気持ち悪。…まぁいっか。可愛いと思ってしまうのは、例えばお腹が空いたりトイレ行きたくなったりするのと同じくらい自然に沸き起こる感情で、自分じゃどうしようもない。
「雛おいでー」
チョコチョコやってきて、前に座る。俺は雛に包帯を巻き始めた。しばらく巻き巻きしていたら雛が呟く。
「ん?前が見えない」
「あ…」
雛の視界が包帯で遮られていた。いけないいけない、俺としたことが、
「んー、神威団長ー、前が見えない」
「団長じゃなくて神威でしょ、カウント1、なんで敬語は直ったのに呼び捨て出来ないの?」
「…」
視界を遮られた状態で、両手を前にふわふわと動かす雛を見て思う。なんか、押し倒したい。いやそれはまずいな。でも目隠しとか燃えない?うわー俺気持ち悪。
「ゴメンゴメン」
仕方ないので包帯を外す。
「うわっ!団長近!!」
「カウント2、雛だってさっきこんな感じだったよ」
「嘘だぁ、こんなに接近してないよ」
いやいや本当ですぅ。
再び包帯を巻き始める。
「ふがっ、息が!!」
「あ…」
雛の鼻の穴がシャットアウトされていた。地球産は酸素無くなるとすぐ死んじゃうからすぐに取り外す。
「大丈夫?」
「大丈夫」
また巻き始める。
巻き巻き巻き巻き…
「よし完成!」
「おおっ!」
鏡を見て感動する雛。もうすぐ地球に着くはずだ。
コンコン
ノックが聞こえて、阿伏兎がドアをあける。
「団長もうすぐ…って何やってんだあんたら…」
阿伏兎の目には包帯巻いてはしゃぐバカップルが映った。
包帯ぐーるぐる
二次元兎と三次元少女、初のペアルック
20090403白椿
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