「というわけで今度の仕事は吉原だってさ」


神威団長がものっそ嬉しそうに言った。
吉原と言ったらアレだ、男の人たちの楽園だよね。そっかぁ、やっぱ神威団長欲求不満になっちゃったのかぁ。まぁ仕方ないよね、なんせ彼女があたしなんだもん。わざわざ吉原行くこと伝えてくれるなんて、やっぱ神威団長優しいなぁ。
あたしは笑顔で言う。


「そうですか、」

「カウント1、あり?」

「あ、いけない!また敬語使っちゃった」

「…あり?」


いけないいけない…。ちょっと気を許すとすぐに敬語が飛び出す。
神威団長が首を傾げてこっちをニコニコ見つめていたので、


「ん?、どうしたん、じゃない!…どうしたの?」


問い掛けたら、さらに首を傾げた。あたしはもう一度問う。


「何か変なことあった?」


神威団長はうーんと唸ってから口を開いた。


「もう一回言うよ?今度俺さ、仕事で吉原行くんだ」

「うん、聞いたよ。頑張ってね」

「ありー?」

「ん?」

「雛、吉原がどんなとこか知ってる?」

「え?…あの夜の街として有名な所じゃないんですか?」

「カウント2…うん正解…あり?」

「また敬語使っちゃったよ……、で?なんでそんな首傾げてるの?」

「だって遊女がわんさかいるんだよ?」

「知ってるよ」

「…」

「…ん?」

「俺が一夜の過ちをおかしたらとか心配にならないの?」

「え?それが目的で行くんでしょ?」

「え?いや違うよ…てかそんなふうに思ってたの?」

「違うんですか?」

「…カウント3」

「あ…」

「ねぇ」

「なに?」

「いいの?彼氏が吉原行くんだよ」

「?仕事なら文句言えないよ」

「まぁそうかもしれないけどさ」

「…何が不満なの?」

「…」





─────**





それは彼女としてどーよ?っていう話。
浮気しないでねとか、酷いよ神威!とか、あたしというものがありながら!!とかとか、ここで言うべき言葉は他にも沢山あるじゃない。なのに、そうですか、頑張ってねって…


「いいの?俺が誰かとヤっちゃっても」

「前にいいって言ったよ?」

「嫉妬とかないの?」

「うーん…かと言って、あたしが代わりに相手する自信ないしなぁ」

「…そう」

「いいよ、気にしないで」

「いや、…あのさ」

「ん?」

「一緒に行かない?」

「はい?」


雛は目をパチパチさせて口を半開きにしたままこっちを見た。


「今回の仕事一緒に行かない?」

「…吉原にですか…?」

「カウント4…うん」

「…あんま行きたくないなぁ…それに、それだと思う存分欲求不満解消出来ないよ?」

「やっぱさ、何か間違ってる気がするんだけど…」

「ん?」

「雛は俺の彼女だよね?」

「…一応」

「一応じゃないでしょ」

「…うん」

「じゃあ他に言うことあるでしょ?」

「…」

「ほら、思うこと言ってみなよ」

「…」

「…」

「…ヤるならせめてあたしより可愛い人にしてね…?」









全然違うよ

三次元少女は思うのです
自分より可愛い子になら、二次元兎を取られても文句は言えないと

二次元兎は思うのです
三次元少女より可愛い子なんていねーよと










20090402白椿


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