…ガクンッ…


足の力が抜けて、ずりずりと壁をつたいながら尻もちをつくが、神威団長のキスは終わらない。


「…ふっ…んんっ…」


本当にあたしの声?っていうような甘ったるい声が漏れて恥ずかしくなった。
もう何回ペナルティーくらっただろう。だけどこういうのには慣れない。キスなんてあんましたことなくて、いや全然したことなくて、神威団長が初めてだったんだけど、たぶん団長はキスが上手いんだと思う。きっといろんな場数を踏んできたんだね。団長にキスされると、頭がふわふわしてぼーっとなる。その頭とは真逆に、心臓はドキドキと激しく脈打って、顔は熱い。恥ずかしくて恥ずかしくて仕方ないのに、敬語も団長って呼ぶ癖も直らない。でも団長はもう溜め息を吐かなかった。むしろ嬉しそうにカウントしていくから困る。

だんだん酸素が足りなくなって苦しくなる。トントンと神威団長の胸板を叩いても解放してもらえない。
いつもこんなんだけど、本当に勘弁してくれ…死ぬ…


「…んっ!……っふはぁ!!」

「はい、お疲れ様」


解放された瞬間に酸素を急いで肺に送り込む。団長はいつも息を乱さない。やっぱり上手いんだ。息継ぎの仕方くらいは教えてほしいものだ。


「ねぇ、これだけペナルティーくらっても敬語も団長って呼ぶのも直らないってことはさ、」

「…はぁはぁ…」

「もしかして雛、俺にキスしてほしいの?」

「はあ!?」


おいおいどんな都合いい解釈してんだ。


「大丈夫だよ。ちゃんと神威って呼べて普通に喋れたら、ご褒美にキスしてあげるから」


オイイイイイイイ!!!それってどっちにしろキスされるってことじゃない!!
いやいやいやいや、キスは嫌ではないのだが、恥ずかしくて死にそうになるんで、やめてほしいんです!せめて一日の回数を考えてほしい。いや、あたしが敬語使っちゃっうのがいけないんだけどさ…。
でも、あたしが敬語や団長を使ってしまうのは、あたしのせいだけじゃないと思うのです。だんだん理由が分かってきたので、今日はそれを言わせて頂きたい。あたしは団長をキッと睨んで言う。


「らんひょうひゃはっひょひいいのひゃわりゅひんでひゅ」


ダメだ…呂律が回らない。キスの余韻が…


「何て言ったの?」


神威団長がケタケタ笑って言った。ちょっとムカついた。





─────**





しばらく時間をおいて、雛は呼吸を整えると再び俺を見て言った。


「団長がカッコいいのが悪いんです」

「一気にカウント2だね」

「うぇえっ!?ちょっと今は本当に待って下さい!!カウント無しで聞いて下さい!!」

「しょーがないなぁ、で?」

「だから、団長がカッコいいのが悪いんです!」


神威団長は首を傾げた。


「ん?」

「いいですか!?あたしは男の人に慣れてないんです!団長も知ってますよね!?」

「うん」

「なのに、初めて付き合ったのがこんなイケメンで、」


雛は俺を指差した。


「しかも女の扱いにむちゃくちゃ慣れているってのが問題なんです!」

「なんで?」

「そんなのあたしばっかドキドキして不公平じゃないですか!」

「そう?」


両方ウブな方が問題じゃね?
全く進展しないよ。


「とにかく、団長がそんなにカッコいい顔してる限り、あたしは恥ずかしくてフレンドリーにはなれません!!」

「なんでそんなに偉そうなの?」


しかもそんなにカッコいいカッコいい言われると逆に恥ずかしいんですけど。てかよくそんなに人を褒められるよね。ある意味キスより恥ずかしいでしょ。なんにしても、呼び捨てより確実に恥ずかしいこと言ってるよ。

…雛の恥ずかしい基準が分からない

でも、雛にカッコいいって言われるのは悪い気しないから、


「ありがと」


そう言ったら、雛は首を傾げた。


「ん?…なんでお礼言われたんですか?」

「はい、カウント1」

「えっ!?ちょっ…!!」









もっともっとキスしたい

二次元兎はどこまでも三次元少女を愛しちゃってます











20090401白椿


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