すごく心がほかほかする。女の子とお話することはあまりなかったから、くるくるの髪の毛とか綺麗に作られた顔とか、女の子って感じを漂わす目の前の彼女に少々憧れを抱く。予想通り神威団長に片思い中の彼女、残念ながらあまりおもてなしすることは出来なくて、今は最近神威団長と腕を磨いているトランプを二人でやっている。誘ったら快く付き合ってくれた。


「うわー雛さんババ抜き強いのね」

「へへ、ババ抜きなら神威団長にも負けたことないんですよ」

「あはは、神威団長でも勝てないものあるのね」

「そうだ、今度紅衣さんも一緒にやりましょうよ」

「え?」

「最近、神威団長なんでかあたしと二人でずーっとトランプしてるんです。たまには他の団員さんともコミュニケーションとった方がいいと思うんですよ」

「でも、…わたしまだただの平隊員だし、」

「大丈夫、あたしのお友達って言えば」

「友達…?」

「あ、もしかしてそんな馴れ馴れしいの嫌でしたか…?」


あまりにも図々しいことだったかなぁと心配になって様子を覗うと、紅衣さんは少し迷ったふうな後にニコリと微笑んで、


「雛さんがいいなら、そうさせてもらいたいな」


そう言った。あたしは嬉しくなって頷く。


「うんうん、そうすれば神威団長にも近づけるし」

「…」


その時、紅衣さんの顔が少しだけ曇ったことに、あたしは気づかなかった。





―――――**





純粋な彼女を見ていると、人としての格の違いを見せられているようで少し心が痛んだ。こんな下心満載で彼女に接触するんじゃなかったと後悔すらしている。ずーっと神威団長に憧れてて、神威団長がいたからこの第七師団目指して、やっと近づけたと思ったらあまり歳の違わない雛さんが団長の傍にいて…少し、いやだいぶ嫉妬していた。最初っから敵視していたから、こんな展開予想外…。一緒にいて…楽しいな。もっと仲良くなりたいな…なんて思っている自分に思わず溜め息した。


「じゃあ、今度は違うのやりましょ」

「あ、わたし神経衰弱なら自信ある」

「分かりました!!じゃあ今度はそれで勝負ですね!!」


でも、神威団長が雛さんに好意を寄せてることはまず間違いないから、彼女はやっぱりライバルなんだ。ニコニコとカードを並べていく彼女を眺める。


もっと、雛さんが嫌な女なら良かった…


もう一つ溜め息した。強さ、顔、スタイル、共にわたしの方が上。でも、見えない魅力。戦場を渡る者にはないなにか。


神威団長も、きっと、これに惹かれたんだ…


強さにしか興味を持たない…それはわたしにも当てはまること。そりゃ多少オシャレや女としての身だしなみには気を配っているけれど、弱さや優しさなんてものに興味を示したことはたぶんない。今までも誰にも頼らず生きてきた。一人で戦場だって生き抜いてきた。戦う術も、生き抜く術も、自分で磨いてきた。一人で生きていけない奴は生きる価値のない奴、そう思って生きてきた。今初めて、何か違うものに触れてしまった気がする。何かを知ってしまった気がする。


「わたし神経衰弱は団長に勝ったことないんですよね」

「そう、わたしもこれ得意だから、今度こそ負けないわよ」

「いや、でもあたしも頑張りますから!!じゃ、始めますか」


そう言って最初の一枚をめくったら、


「あ、」

「あはは、すみません、ジョーカー抜くの忘れてました」

「あはは」


そうやって穏やかな空気がこの部屋を満たしていく。







もっと仲良くなってみてもいい?

可愛い彼女に問いかけてみる





20100209白椿


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