沖田さんはどことなく神威団長に似ていると思った。だけど笑顔はやっぱり神威団長の方が素敵だと思う。随分男の人に慣れたなぁと思った。沖田さんみたいなイケメンに出会っても難なく会話できる!成長したなあたし!!





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それにしてもニコニコ話すなぁと感心する。それはビックリするくらい純粋な微笑み。何も企んでいない、逆に言えばすぐに騙されそうなオーラを放っている。


「女中さんすぐに見つかるといいですね」


ちょっと本気で彼女が女中やってくれたらいいのにと思う。


「ところであんたの働くとこってどんな仕事するんですかィ?」

「あ、女中さんとあんまかわらないかもしれないですよ。掃除とか料理とか」

「へぇー」


だったら尚更ウチで働いてくれないかなぁと。
そっからも他愛ない話をして、何でもないことで笑って、辺りはどんどん暗くなっていく。


「どうしてそんなにみたらし団子買ったんですかィ?」

「それがあたしにもよく分からなくて」

「なんでィそりゃ」

「ははっ次は気をつけたいです」


ふと彼女の男ってどんなヤツなんだろうと考える。彼女みたいにほわほわしているんだろうか?それとも逆にしっかりしてるとか、はたまたムキムキマッチョとか…?気になるので訊いてみることにする。


「あんたの大好きな人ってどんな人なんですかィ?」

「ぇえ?」


予想外の質問だったのか、少し目を見開いた後にやっぱり恥ずかしそうにして、


「そ、そうですねぇ…」


ちょっと考え込んで、


「あ、沖田さんに似てるかもしれませんね」


そう言う。


「へぇー」


だったら、もし今彼女がフリーだったとしたら、俺と付き合うことについて真剣に考えてくれるのだろうか…?そんなことを考えている自分に首を傾げる。
そうこうしているうちに、目的地が見えてきて、


「あそこですぜィ」

「え?」

「ケーキ屋」


指差して言ったら、そちらを見て安心したように微笑んだ。


「じゃ、じゃあ沖田さんこれで、本当にありがとうございました」

「いえいえ」

「本当に助かりました、なにかお礼したいんですけど…あ、みたらし団子好きですか?」

「ああ、そんなのいりやせんよ、これは仕事なんで」

「あ、そうですよね、…あの、本当にありがとうございました」


何度もお礼を言う彼女に苦笑した。良い子だなと思う。


「じゃあ、さよなら」


そう言うと笑顔で手を振る。俺もつられて手を振った。


「さよなら」


そうして振り返らずに駆けていく彼女。しっかりと目的地目指して走る足取りはどこか軽やかである。その大好きな人に会いに行くのだろうか…?


「あ、」


小さくなっていく背中を見ながら気付く。名前訊くの忘れてた。


「何やってんだか」


まぁいっか、きっとまたどこかで会うだろう。訊くチャンスはいくらでもあるはずだ。そしたらその時に、もっかい女中に誘ってみようか。彼女が来てくれたら、真選組は今よりほんわかするに違いない。

回れ右して屯所へ向かう。その道を、彼女が綺麗だと言った夕焼けが染めていた。よく見る光景なのに、なんだかいつもより綺麗に見える気がして不思議に思う。


「…大好きな人…ねィ」


俺に似てる…か。
出会う順番って大切なんだなぁと思う。もし先に出会ってたらなぁとか変な想像してしまう。でも、そうだ、付き合ってるヤツがいるからってアタックしちゃいけないなんてルールはない。


「あー腹減った」


また出会った時に…
そう思って一歩を踏み出す。





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思ったより暗くなってしまった。早く帰らなきゃ!!

みたらし団子が重くて邪魔だけど、転ばないように走る。早く会いたい…。今日のこと話さなくちゃ。やっぱり秘密って、なんか悪いことしてるみたいで嫌だ。でも話すのが少し恐いのも事実で、


「はぁ、はぁ」


でも早く帰りたい。
太陽が沈んで行く。暗くなって行く。江戸にさようならを…。









貴方のもとへ

駆けるあたしは今乙女です









20090903白椿


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