「頑張れ…」
雛が呟く。それはあの侍に向けてのものだ。どうして初対面の奴にそんなに肩入れ出来るのか分からない。雛はあの男のことを知っている…?それはないと思うけど…。
「あっ!」
見れば夜王の攻撃をもろにくらっている。所詮は地球人だったということか。
「ありゃりゃ、もうおしまいか、ツマンないの」
少しは俺も期待したというのに残念だ。溜め息を吐いた時、
「ううん、銀さんは負けない」
雛は言った。いやどう見たって終わりだと思うのにどうしてそんな強く言い切れるのだろう?雛の目は強い光を持ってあの侍を見つめる。俺は暫く口を開けなかった。
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殺し合いなんて見ていて気持ち良いものではない。目を背けたくなる。だけどあたしには銀さんの勝利に確信があった。それは銀さんがこの物語の主人公であることを知っていたからという、何とも狡い理由ではあるけれど、それでも結果が分かっているから目を背けずにいられる。戦う姿を、どこか安心して見ていられた。それから、もう一つ思うこと。
カッコいいな…
銀さんの戦う姿はカッコいい。何かを守るため、自分の守りたいものを守るために必至な姿。鋭い目付き。光る銀色。どんなに叩きのめされても潰れない光…。
やっぱり戦うには、それなりの理由が必要だと思うのだ。戦いは誰かの命を奪う。人生を奪う。相手の人生を犠牲にしてでも守らなくちゃならないものがある時に人は刀を取るんだ。
だけどさ…
あたしは隣の神威団長を見た。ニコニコと二人の戦いを見つめる。その瞳がふいにこちらに向いてドキリとする。
「どうかした?」
あたしは首を横に振ってまた銀さんを見た。
戦いには理由が必要。これはつまりは地球産の考え方なんだろう。夜兎族には通用しない考え方なんだろうなと思う。神威団長には通用しない。だから夜兎族の考え方を理解しなくちゃいけない。そう、今あたしは団長を理解したくて、こうやって一緒に戦場を見ているんだ。
だけど、
銀さんカッコいい
そう思うのは銀さんの戦い方が正しいと思うからで、あたしが銀さんと同じ地球産だからだろうか。
種族が違う
文化が違う
考え方が違う
神楽ちゃん…
地球産と一緒に暮らす夜兎。神威団長の妹。ひどく彼女と話をしてみたくなった。
そして銀色は勝利に光る
二次元兎は少しだけ不安を感じ、大きな楽しみを抱きしめた
20090701白椿
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