神威団長って、猫みたいですねって言ったらニコニコと首を傾げた。でも何も言われなかったからそのままその場を後にする。

ふわふわ

ふわふわ

気まぐれで気分やで、自分のしたいことだけしている。興味のあるものにはこれでもかってくらい執着して、でもすぐ飽きて捨てる。玩具も、人も、女も、命も。だから早く飽きちゃえばいいのになぁと、自分の部屋を見回した。ずっとそのまま。ベッドも机も、飲みかけのココアも脱ぎっぱなしの上着も。全部、全部あの時のまま。そしていつも

ガチャリ

こうやって団長はわたしの部屋に来て部屋を見回して、それで、

「はぁ…」

溜息するんだ。そんで机の上のココアのマグカップのとこまで歩いて行って、

「…もうさすがに飲めないよネ」

そうやって小さく呟く。当たり前だ、だってもう一週間も前のものだろう。早く捨てて洗った方がいい。変な匂いを放ち始めるよ。だけど団長は絶対部屋の物には触れない。脱ぎっぱなしの上着にすら触れないように器用に歩く。そんな彼を見て、わたしはいつも悲しくなるんだよなぁ。もっと他にいろいろ出来たんじゃないかって後悔ばかりしてしまうんだよなぁ。だからほら見てよ、わたしはこの船を抜け出せなくなっちゃったんだよ。少しでもこの船を出ようとすれば、足が鉛のように重くなって船の中心に引き戻されるんだ。

「また匂いが薄くなった…かな」

そんなわたしを余所に神威団長は言う。匂いとはわたしの匂いのことだろう。ちょっとその発言は気持ち悪いだろう。だけどわたしは悲しくなるばかり。だって神威団長の瞳は変質者とか、ましてやいつもの殺人者の目ではなくて、とても暗く生気のないひどく悲しい目をしているのだから。

わたしはここにいるよ

あーあ、早く成仏できないかなぁ。あんなに命を奪ったわたしに、安息の地は死後もなお与えられはしないのか。だったらせめてもう少し生きていたかったのに。団長の隣にいたかったなんて思ってしまうのは、貴方が予想外にわたしに執着していたことを知ってしまったからなんだぞ。ちくしょー、もっと早くに教えろや。バカ。大嫌いだ。





君のいた証を消さないよう

今の団長最高に情けなくて笑える





20100112白椿