「ん…」


春雨の船内に到着すると、抱きかかえていた名前が目を覚ました。


「あ、起きちゃった」


俺と目が合った途端、名前は暴れ出す。


「やだー!!お兄ちゃん離してー!!!」

「名前、いい子にしてなさい」

「やだやだ!!帰るーお兄ちゃん嫌いー!!!」

「ダメだよ、今日から名前は春雨の一員なの」

「絶対やだー!!」


思いっ切り暴れても、俺と名前じゃ力も体格も違うわけで、簡単に押さえ込むことができる。
せっかく俺がわざわざ夜兎の惑星まで迎えにきてあげたのにね。


「いいからおとなしくするの」


口を押さえたら、


「んーー!!!」


蹴りが飛んできて、


ガシッ


咄嗟にあいている方の手で防ぐと、一瞬解放されたスキをみて名前は逃げ出した。


「こら名前ー」


脱兎のごとく逃げていく名前。
俺から逃げられると思ってるの?まぁ、鬼ごっこなんて久しぶりだから付き合ってあげようと追いかける。


「名前ー待てー」

「ぎゃああああ!!」


必死に逃げる姿が可愛くて、少し加減しながら走る。
名前が通路を曲がって、姿が見えなくなり、そろそろ捕まえちゃおっかなと思ったら、


「ううわっ!!」


名前の驚く声が聞こえた。急いで角を曲がると、


「通路は走るんじゃねぇ!このすっとこどっこい!!」


阿伏兎に捕まえられた名前の姿。


「ん?お前さん見ない顔だグヘェッ!!」


とりあえず一発阿伏兎を殴ってやる。せっかく俺が捕まえようと思っていたのに。


「団長、なんで今殴ったんですかね?」


阿伏兎は殴られた頬を擦りながら言った。
俺は名前を自分に引き寄せる。


「ぎゃあ放せー!!」


暴れる名前を取り押さえて、


「ちょっとゴメンネ」


軽く気絶させると、名前はクテッと俺の中に収まった。
そっと抱き寄せる。


「団長、そりゃ誰だ?」

「俺の妹」

「妹?」

「うん、名前っていうの」

「団長妹が二人もいたのか」

「そう、名前は神楽より上ね」

「ほう…」


マジマジと名前を阿伏兎が見るからさ、ちょっと嫌で名前を隠すように抱く。
そして言う。


「名前船に乗せることにしたから」

「は?」

「文句ある?」

「…いや…それは団長の権利だしな…」


俺が満足して笑うと、阿伏兎は頭をポリポリ掻いて言った。


「しかし、なんでまた…?」

「名前可愛いからさ、癒しになるんだよ」

「は?」

「この前吉原でアイツに会っただろ?何かムカムカしちゃって」

「…三番目の妹のことか?」

「そう、そしたら無性に名前に会いたくなったんだよね」


腕の中で意識を手放している名前。
なんか、そう、例えるなら天使だよね。可愛い。
同じ妹でもアイツとは全然違うんだよね。不思議だよ。


「名前可愛いでしょ?」


そうやって言ったら、


「確かに綺麗な顔立ちだな」


と阿伏兎。


「顔だけじゃないよ、仕草も声もぜーんぶ可愛いよ」

「それは結構なことで」

「しかもけっこう強いし」

「ほう」

「笑顔もいいけど、嫌がる顔とか泣き顔とか可愛いすぎて狂いそうになる」

「それもう狂ってませんかね?」

「阿伏兎にはあげないよ」

「はい?」


俺は名前を抱え直して阿伏兎を見つめる。


「…はあ…大丈夫ですよ、俺はそんな年下に興味ないですからね」

「そう?」

「大丈夫だって…」

「ならいいけど」


誰にも渡したくないんだよねー。
お兄ちゃんは心配です。名前は可愛いすぎるからさ、世の野郎共は黙ってないよ。
今まで夜兎の惑星に一人にして置いたのだって、考えてみたら危険なことこの上ない。
今日から俺がしっかり守ってあげなきゃね。


「団長」

「なに?阿伏兎」

「妹さんの部屋はどこにするつもりだ?」

「ああ必要ないよ、俺の部屋と共同にするから」

「…」


ちょっと阿伏兎の顔が引きつった。


「なに?」

「…いや」











危険な匂い

シスコン兄貴にご注意!!











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さくら様へ


20090301白椿