※ルルル番外編
※帆花さまに頂いた小説からの発展もの
※調理担当の夜兎の女の子の名前は帆花にしてあります









帆花さんが厨房を快く貸してくれたおかげで、何とかバレンタインを乗り切ることが出来たあたし。でも、みんなの為に作った世話チョコまで神威団長にすべて食べられてしまった。神威団長に渡す前にみんなに渡してしまえば良かったと少し後悔している。それでも、大好きな人のために存在する行事であるから、どうしても神威団長に一番に渡しに行きたかったわけで、


「…なにぶん、恋愛というものに不慣れでして…」


どうしても余裕が持てない。だから、せめてお礼を言いに行こうということで、今帆花さんの部屋を訪れていたのだ。


「いいえ、団長に渡せて良かったですね」


そうやって笑顔で切り返す帆花さんを見てほっと胸を撫で下ろす。なんて優しい人なんだ。帆花さんは料理の腕だけじゃなくて戦闘の腕も持っている。この前奇襲されたときに助けてもらったことを思い出す。あの時はびっくりしたものだ。いつも料理をニコニコと作っている彼女の腕が素早く敵の急所をついていったのだから。もう唖然とする他ない。あたしは少し彼女と話してみることにする。


「…帆花さんは夜兎族なんですか?」

「そうですよ」

「…戦場に出たいとか、思わないんですか?」


あの奇襲のとき以外に、帆花さんが戦闘しているところを見たことはない。そういえば、神威団長がアイツは才能は持っているけど使い方を知らないって、前に言っていた気がする。その時は何となくスルーしてしまったけど、きっとこのことを言っていたのだろう。帆花さんは少し不思議そうにあたしを見た後微笑んだ。


「夜兎みんなが、あの団長と同じってわけじゃないんですよ」

「…そうですよね…ごめんなさい変なこと聴いて」

「いいえ、私はどっちかって言うと料理してる方が好きなんです」

「確かに、帆花さんが作るお料理とっても美味しいです」

「それはありがとうございます」

「今度またお料理教えて下さい」

「あはは、いいですよー」


もう少しお話しましょうという雰囲気になって、帆花さんはあたしを部屋に招き入れてくれた。美味しいココアも出してくれてソファに腰掛ける。部屋は白を基調としたシンプルな、でも女の子らしいデザインで、なんだか久しぶりの雰囲気に少しだけ心臓が高鳴る。お料理ができて戦えて、女の子らしい夜兎の女の子。少し憧れのようなものを抱く。


「神威団長が、帆花さんは戦場に出たら面白いと思うって言ってましたよ」

「うーん、何回か誘われたことあるんですけど…やっぱねぇ自分から行きたいとは思わないので」

「そうなんですか…夜兎にしては珍しいんじゃないですか?」

「そうですねー…でもまぁこれが私ですね」

「何かカッコいいですね」

「ふふ、そんなことないですよ」


そんなふうにニコニコと会話していれば、


「ん?これって」

「ん?」


目に止まったのは、


「…キムタク?」


の雑誌だった。あたしの世界にもいたけど、こっちの世界にもいたのか…という妙な感動と、


「キムタクって…地球人ですか?」


もしかしてこっちのキムタクは夜兎?という疑問で彼女を振り仰ぐ。すると、


「み、見つかっちった」


少し恥ずかしそうに笑う帆花さんがいた。


「キムタクは地球人ですよ。名前さん知らないんですか?有名人でしょ?」

「あはは、そうですよね…」


こっちのキムタクとあたしの知っているキムタク…とても似ていたので思わず見入った。
帆花さんが同じように雑誌を覗きこんで言う。


「私好きなんですよねー」

「そうなんですか、カッコいいですよね」

「でしょでしょ!!この前DVDも買ったんです!!」


少しはしゃいでいる様子の帆花さん、本当にキムタクが大好きなのだろう。彼女はそういえばと立ち上がって、


「実はバレンタインもキムタクのために作って」

「え?」

「だけど、ほら彼は地球にいるから渡せなくて、良かったら食べます?」


いやぁ、さすがにキムタクへの帆花さんの愛を食すわけにはいかないだろう。でも、


「いや、これ作ったの半分名前さんの影響だし、このままあっても誰も食べないし、腐るだけです」

「え、あ、あたしの影響??」

「そうです。名前さんがお菓子作ってるの見て作りたくなったんです」


そう笑顔で言われては断るのも心が痛い。


「じゃあ、帆花さんも一緒に…」


そう言って、キムタクのために作られたブラウニーはあたしたちのお喋りのお供になったのだ。すごく美味しくて、やっぱり帆花さんお料理上手だなぁと再認識。もう完璧ガールじゃないか。彼氏いないのかぁと思ってさり気に訊いてみれば、


「キムタク以上の男はいませんよ」


彼女の理想はお高い様子。それでもそれくらいの人じゃなきゃ帆花さんに釣り合わないような気もする。とりあえず頷いておけば彼女はおかしそうに笑った。


「…本当は、あたし帆花さんの分もバレンタイン用意してたんです」

「あー阿伏兎さんに聞きました。団長が全部食べちゃったんですってね」

「そうなんです。…ごめんなさい何も恩返しできなくて」

「いいえー、あの団長のお守してくれるだけでわたしたちは大助かりですよ」

「はは…今度また帆花さんの為に何か作らせて下さい」

「え!、作ってくれるんですか?」

「…帆花さんに比べたらまだまだ未熟者ですけど」

「わぁ、嬉しいです。あ、また今度二人でお料理しましょうよ!!」

「わぁわぁ!それ楽しそうですね!!」

「二人でお菓子パーティーしましょ!!」

「いいですねー!!」




ちなみにあたしはツヨシくん派



「ねぇ帆花」
「なんですか団長」
「今度名前とお菓子パーチーするんだってね」
「しますけど何か?」
「妬けちゃうなぁ俺もまぜてよ」
「嫌ですよ、そう簡単に名前さん独り占めできると思わないことですね」
「殺しちゃうぞ」
「名前さんに嫌われてもいいならどうぞ」
「…」

団長の敗北。
団長ざまーみろコノヤロー。





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帆花さまへ

何だか調理師さんの存在にモヘました^^
一周年記念小説ありがとうございました。
20100228白椿