彼女は強い。敵にも味方にも隙を見せず、そして戦場では一片の同情も見せずに完全に冷酷に徹する。俺と違って無表情をベースとする彼女の顔が表情を見せることはあまりない。嬉しくても悲しくても恥ずかしくても彼女の顔は無表情。だけど、これがとんでもない変人ヤロウで、


「団長、今日もいいケツしてますね」

「…」


いったいどこのセクハラ部長のセリフだっつー話。言うだけならまだしもコイツは、


「うん良い揉み心地」


無表情でこういう行為をやっておけるのだ。


「てい!!」


瞬時に回し蹴り。でも彼女はひらりと身を捻ってかわし、大して焦った様子もなくあっぶねーと呟く。


「あんた腐ってても女なんだからそういう行為自重しなよ」

「女だから自重しなさいなんておかしな話ですよ、今は男女平等社会です」

「そういうのヘリクツって言うんだよ」


そのまま軽い殺し合いの始まり。だけどやっぱ彼女は強いのだ。ちょっと本気出したくらいじゃやれない。

「やっぱあんた強いなぁ」

「うーん、その腕の筋肉のつき具合がストライクです」


繰り出したパンチをガシっと掴まれたかと思えば、彼女はそれを目の前まで引き寄せて観察を始める。


「気持ち悪いんだけど」

「気持ち悪くてケッコーコケコッコー」

「…」


白くて長い手足、長い睫毛に桃色の唇。可愛いに部類されるだろう彼女。常に無表情だからクールビューティーだなんて言っている奴もいる。それでも彼女の本性を知ればみんな引いていくのは言うまでもない。彼女の頭の中は戦闘のことと変態チックなことしか詰まっていないんだ。


「ねぇ、団長もっと胸元あいた服着て下さいよ」

「なんで?」

「こう鎖骨がチラッチラッってする感じが好きなんです」


俺と殺り合ってんのにこんなふうに余裕で会話できるとこがすごい。すごいけど、


「やっぱ気持ち悪い」


ちょっとでも考えてること自重したらモテるんだろうに。残念だよ。でもだからって他の野郎に渡すつもりはないんだけどさ。


「もうちょっと言動に注意してくれたら彼女にしてあげてもいいのに」

「いやそれは遠慮しておきます」

「なんで?」

「団長将来ハゲそうなんで」

「…」

「わたしの彼氏の第一条件ハゲないことなんで」





明日は明日の風が吹く!


まさかこんな変態女の言葉一つで落ち込むことになるなんて…自分が情けなさすぎて涙が出た。でも第一条件ハゲないことって、けっこうハードル高い気がする。





Thanks.雅さま
銀さんか兄貴かどっちかでというリクエストでしたが、どっちにしようか最後まで悩みました(笑)どっちでもいけるネタですね。
20100215白椿


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